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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十四話 キュンメル事件(その2)
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んでくれるでしょう」
「違う、そうじゃない……」
「男爵こそ門閥貴族の誇りですよ、私もそう思います。卑怯な手段で相手を抵抗できなくさせる。そして抵抗できない相手を弄って喜ぶ」
司令長官の言葉には辛辣な皮肉が有った。しかしキュンメル男爵は何も言えずにただ震えている。
「どうしました? 口が利けなくなりましたか、男爵」
「違う、私はそんなつもりじゃなかった。ただ……」
「ただ、何です?」
「ほんの少しだけ宇宙をこの手に握りたかった。僕の命はもう長くない、何かをして死にたかった。どんな悪い事でも馬鹿な事でもいい、何かして死にたかった……」
「ハインリッヒ……。もう十分でしょう、スイッチを渡して」
フロイライン・マリーンドルフの言葉にキュンメル男爵は頷いた。部屋を支配していた緊張感が消える。しかし男爵は直ぐにはスイッチを渡さなかった。
「キュンメル男爵家は僕の代で終わる。僕の病身からではなく僕の愚かさによってだ。僕の病気は直ぐに忘れられても愚かさは何人かが覚えていてくれるだろう。それで十分だ」
スイッチがフロイライン・マリーンドルフに預けられた。男爵を拘束するべきか否か、司令長官を見るとその必要は無いと言うように首を振った。
「キュンメル男爵、フロイライン・マリーンドルフ。私はこれで失礼させていただく。さあ、戻りましょうか」
「そうだな、ユスティーナ、失礼しよう」
「はい」
帝国暦 488年 8月 19日 オーディン 宇宙艦隊司令部 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
あれから三日がたった。しかし最初の二日間ははっきり言って説教の嵐だった。先ずミュッケンベルガー元帥に三時間近く説教された。お前は国家の重臣としての自覚が足りない、自分の死がどれだけ帝国にダメージを与えるのか少しは考えろ、そんなところだ。
俺が死んでも帝国には問題ない、歴史は変わらないと言ったら、馬鹿者と怒鳴られまた説教が最初から始まった。頼むからあんまり興奮しないでくれ、心臓が悪いんだから。
ようやく解放されたと思ったらその次はリヒテンラーデ侯、エーレンベルク、シュタインホフの三人の説教だ。流石に今度は俺が死んでもは言わなかった。ただただ黙って大人しく聞いていた。おかげで説教は二時間で済んだ。解放されたときにはフラフラだった。キュンメル男爵じゃないが虚弱体質なんだ、少しは労わってくれ。
ヴァレリーとリューネブルクは俺が疲れていると見たのだろう、何も言わずに俺を休ませてくれた。もっともそれはその日のことだけだった。翌日にはしっかりと説教が入った。説教をするのはヴァレリーで傍で見ているのがリューネブルクだ。いつもはニヤニヤして聞いているリューネブルクが今回は厳しい表情で俺を睨んでいる。勘弁してくれ、危険は有ったが成算は
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