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真田十勇士
巻ノ六十九 前田慶次その九

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「生きていきまする、しかし」
「しかし?」
「真田殿は違いますな」
 微笑んでだ、幸村のその目を見て問うたのだった。
「それは」
「それがしは」
「武士として、義に生きることがですな」
「そして義に死ぬことが」
「望みですな」
「そう言われますと」
 そう言われるとだった、幸村は飲みつつも態度を畏まったものにさせてだった。そのうえで慶次に対して答えたのだった。
「それがし確かに」
「義をですな」
「守りそして」
「生きていきたいですな」
「最後の最後まで」
「ではそうされて下され、真田殿ならばです」
 幸村、彼ならというのだ。
「それを必ずです」
「出来ますか」
「家臣の方々と共に」
 十勇士も見ている慶次だった、幸村と共にいる。
「主従で」
「我等は殿と一緒です」
「何があろうと共におります」
「火の中水の中」
「六界の何処にでもです」
 幸村が行くのならというのだ。
「お供致します」
「そして死ぬ時は一緒です」
「生まれた時は違えども」
「よき家臣を持たれている」
 慶次はこのことにもだ、微笑んで述べた。
「しかも十人も」
「それがしには過ぎた者達です」
 その彼等を見てだ、幸村は慶次に答えた。
「非常に」
「ならばですな」
「はい、この者達がいるので」
 共に、というのだ。
「それがし随分助けられています」
「そうでしょうな、では家臣も大事にされ」
「そのうえで」
「義を歩まれよ、ではわしは」
「傾奇者としてですか」
「大不便者として生きまする」
 ここでも笑ってこう言う慶次だった。
「そうしていきまする」
「大不便者ですか」
「はい、やはりです」
「慶次殿はですか」
「槍しか芸のないこれ以上はないまでの」
 自分のことをこう語るのだった。
「大不便者なので」
「そうして生きていかれますか」
「最後まで」
「ですか、では共に生きる道を踏み外さずに」
「そしてですな」
「生きていきましょうぞ」
「そうしましょうぞ、では」
 ここまで話してだ、慶次は幸村と十勇士達にさらに話した。
「酒と鯉を」
「はい、残さずですな」
「食べましょうぞ」
 こうして最後の最後までだった、主従は慶次が馳走してくれた酒と鯉を残さず楽しんだ、それが終わってだった。
 慶次と笑顔で別れ屋敷に戻った、そして後日前田に会って慶次の話をすると。
 ここでだ、前田はやれやれといった顔になってだ、幸村に言った。
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