第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#36
星魔の絶戦 千変VS星の白金W〜Blood scissor's King Leo〜
[4/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ソレを引き戻すのは容易なコトではない。
ましてや精神的に立ち直っていない妹を抱えながら。
元より頭脳戦、心理戦はティリエルにまかせ
自身はその指示に従うのが主であったソラトに
現状を明確に認識出来ていたかどうかは甚だ疑問。
しかしそれ故に、本能的な危機感はひしひしと胸中を切迫していた。
両親の不和を感じ取る赤子のように、母親の亡骸を舐め続ける仔犬のように。
ジャギンッ! ソラトが “そうなるように” に撃ち返していた斬月が、
無数の鉄筋ビルを大根切りにして戻り背後からシャナの首を刎ねる直前で
大刀に絡め取られた。
炎蛇の如く巻き付いた黄金長鎖は針の形状へと圧縮する猛威で
刀身を灼き締め刃を絞るが、やがて白い蒸気を立ち上らせながら鎮静する。
束の間の安堵、それが少女の気勢を一瞬ソラトから逸らした。
もし預かった鎖が己を窮地に晒すだけでなく
“戻ってこなかったなら”
その煽りをモロに喰うソラトに憐憫を禁じ得ない。
しかし自覚のない少年が蔓に腰下をつける妹に手を伸ばす、
震える指先を片腕であっさりと引っ張り上げ
そのまま肩を寄せながら悠揚とした口調で訊く。
「ねぇ、ティリエル? “アレ” つかってもイイ?」
子供のような問いかけとは裏腹に、ティリエルは先刻の脅威以上に
その顔を青ざめさせた。
( “アレ” ?)
柄を口に銜えて鎖を腕に巻き直しながら、
シャナは遠隔系の能力を警戒してソラトの大剣に意識を尖らせた。
「いけません! いけませんわお兄様!
危機に瀕したのは私の未熟なれば、
お兄様がその非を蒙る理由など!」
理性的な妹の抗弁を、その切迫した心情以外
彼は殆ど理解していない、しかし狩猟に挑む野生動物が如く、
その本能は眼に視えない風の色まで感じ取っていた。
「でも “ピニオン” 一個壊されちゃった。
さっきのお兄ちゃんがやったにしては速過ぎない?
シュドナイだってイルヤンカのおじちゃんだっているのに。
誰か 「仲間」 がいるんだよ、ボク達の知らない。
もたもたしてると “そいつも” 合わせて相手が三人になっちゃうよ」
伏兵。
そうだ、どうしてその可能性を考えなかった?
数でも力量でも圧倒的に相手を上回る余裕から生まれた傲りか?
しかしそんな事をまるで考慮しないソラトが明確な解答を導き出した、
“欲望の嗅覚” が示すとおり本能的に生きているため、
論理が生み出す相反とは無縁だった。
「でも、でも、お兄様……」
認識では解っても感情がどうしようもないティリエルは、
哀願するようにふるふると輪郭を震わせ両手を組む。
対してソラトは意味が解らないという風に
妹の潤んだ眦 を拭い小首を傾げ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ