冬の味覚
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年末年始の和やかムードもなりを潜め、再び鎮守府もいつもの忙しさが戻ってきた頃。騒がしい二人組が店のドアを叩いた。
「うぅ〜…さぶさぶっ!マスター、熱燗二人前ねぇ〜!」
「ちょ、ちょっと隼鷹!勝手にアタシの飲み物決めないでよっ!」
入ってきたのは飛鷹と隼鷹。共に今日はキス島周辺の漸減作戦で集中的に錬度を上げるように指示していた二人だ。
「おぉ、お疲れさん。二人とも今帰りか?」
俺は熱燗の支度をしながら、お通しの茄子と胡瓜のからし漬けを切っていく。
「そうそう、アタシ等に被弾が無いのは良いんだけどさぁ。」
箸も使わずにポリポリとからし漬けをかじる隼鷹。キス島周辺の海域は地磁気や海流の影響で水雷戦隊以外は島に近寄れない。その代わり、逸れたルートにいる敵はさほど強くもなく、倒して敵の戦力を削ぎながら艦娘の錬度を上げやすい、『おいしい』海域なのだ。
「替わりに潜水艦の娘達がボロボロになるのが不憫でねぇ……。」
敵の艦隊はほぼ水雷戦隊。潜水艦を1隻入れておくと、躍起になってそちらを追い回してくれるモンだから、水上艦艇が仕事をしやすくなるのだ。…いわば『デコイ』役を潜水艦の娘達に任せてしまっている。
「幾らなんでもアレは可愛そうにも程があると思うんだよねぇ……?」
隼鷹はジト目でこちらを睨んでくる。
「そうは言われてもなぁ。こっちにも急いでお前らを鍛えなきゃならん事情があるんだって。……ホレ、熱燗。」
潜水艦に無理をさせているのは解っている。でもな、こっちにもやむにやまれぬ事情があるんだよ。そう思いながら燗の程よく付いた徳利と猪口を渡してやる。
「アチ、アチチチ……。その事情って?」
「もうすぐ大規模作戦も近いってこの時期に、本土から視察が来るんだよ。」
俺の言葉に目を丸くする二人。そりゃそうだよな、今まで言ってなかったもの。
「え、視察?どこの泊地?階級は?」
「まぁ落ち着けよ。所属は鹿屋だそうだ。階級は……中将だったかな?ウチの機動部隊の運用が見たいんだと。」
「へぇ〜…鹿屋かぁ。」
鹿児島の鹿屋は昭和11年に帝国海軍が鹿屋航空隊を設立してからというもの、自衛隊の航空基地を始め、防空に力を入れてきた土地だ。当然、その土地柄が新設された艦娘を主軸とした艦隊にも反映されているのか、空母を軸とした艦隊運用が主らしい。
「なるほどねぇ。それで珍しく二航戦の二人が夜間爆撃訓練なんてやってたんだねぇ。」
今も沖合いでは蒼龍・飛龍の二人がそれぞれの艦爆・艦攻隊の隊長を伴って特殊訓練の真っ最中だろう。いつものお気楽な二人ではなく、引き締まったイイ面構えをして出ていった。あれなら視察の時には期待以上の物を見せられるだろう。他の正
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