秘密の部屋
[1/13]
[8]前話 [1]次 最後
今年もまたこの日がやって来た。
送られてきた手紙に沿って本を呼び寄せていた僕の杖を持つ指が止まる。
「ギルデロイ・ロックハート著……?」
随分と最近の著作に眉を寄せる。
過去も未来も現在も、如何なる事も知る僕は普段は意識して記憶を封じている。それはひょんな事で解けるのだが……その為何故こんなモノが教科書として利用されるのかが理解出来ない。それも7冊。
リドルがいれば恐らく何かしら言ったのだろうが、残念ながら此処に彼はいない。
「……久々にダイアゴン横丁に行かなければなるまいか」
最新の物が幾つか必要だが、それらは書架にない。
ついでにここ20年に発売された本を買い集めるも良いだろう。
僕はローブを呼び寄せた。
久々に12歳の姿となりダイアゴン横丁を歩く。
首にある聖銀とアングレサイトの十字架を模したチョーカー。それに掛けられた認識阻害魔法が作用している為、騒ぎにはなっていない。
アングレサイトというのは宝石の一つ。金色をしていて非常に脆く加工し辛く、入手したそれは名の知れた魔法族の彫金師が僕の為に彫金した一点物だったりする。確か"深い霧の中選ばれた者のみが宝玉を目にする権利が与えられる"と言っていただろうか?
Flourish and Blottsと書かれた本屋に入る。此処で教科書が全て揃うのだ。
「……人が多いな」
高揚した女性が見るチラシには成程、ギルデロイ・ロックハートの握手会と書いてある。
特に興味もなく本を次々と積み上げていく。
背後で騒がしくなり小競り合いが起こり始める頃には本屋を後にしていた。知っているのは僕の顔を見て惚けた店主位だろう。ちらと赤毛の少女の所持品に紛れ込んだ黒い本を眺めて、僕は本屋を出た。
続いて向かったのは夜の闇横丁。非合法な物が売られる闇の街。
陰気な空気が漂うそこは薄汚れたローブを着た人間がこそこそと体を縮ませている。
人攫いもスリも横行するそこには数多く珍しい書籍や魔法薬の材料が揃っている……割高だが。
それは闇の魔術についての禁書も同じ事。
魔法薬と禁書をそこで購入し拡張と軽量魔法の掛かったバッグに詰め込んで、マルフォイ親子を横目に家へと真っ直ぐに帰宅した。
*****
籠から出したコキンメフクロウを片手で撫でながら列車の外を眺めた。沈黙は嫌いではない。が、少しばかり退屈だ。
トンネルを抜けた先、二つの叫び声が聞こえた気がして、湖へ目を移す。
「車?」
蛇行運転する空飛ぶ車に小さく笑った。
どうやら今年も彼らは前途多難のようだ。
「……本当に前途多難だな」
現在闇の魔術に対する防衛術の授業。
初めの初めからピクシー小妖精を教室で離すというギルデロイ・ロックハート氏の暴挙により教室は大混乱極まっていた。当の新任はピクシーに杖を奪われ部屋
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ