賢者の石
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ルベットボイスがすっと耳を抜ける。
「失礼します。魔法薬学のレポート提出に参りました」
扉を開けた先はシックな内装の執務室だ。奥にデスク、本棚が幾つも、手前にテーブルと1人がけと2人がけソファーが2組。目に優しい温かな灯りが絨毯を照らしている。隣は魔法薬学の教室で、部屋の傍には準備室の扉がある。高価な魔法薬の素材が几帳面に整理されている。また、此処でも調合が出来るように部屋の中央には大鍋があり、傍にはそれ用のテーブルが置いてある。
スネイプ教授はいつもの様に神経質そうな仏頂面でレポートの採点を行っていた。
「……」
無言で杖を振るいデスクの前に椅子を置いた教授は紅茶を2セット用意して山になった羊皮紙の束をテーブルの方に移動させた。
「ありがとうございます」
「構わん。丁度休憩にする所だった」
つまり自分と向き合う時間は即ち息抜き出来るという事。
「(本当に面白い人間だな、セブルス・スネイプ……)」
「ふむ……今日は治療薬についてのレポートだったな」
羊皮紙ふた巻きがテーブルに並べられ、スネイプ教授はまず提出分のレポートに目を向けた。
レポート提出の際決まって僕は自主勉強で制作したレポートと共に提出する。それも課題の議題に沿ったものを。個々でも読めるが自主勉強の方は課題で制作した分を更に発展させた応用と呼ぶべきもので、課題に目を通してから見ると視野が広がるように工夫している。
「楽しそうですね」
「……ん、ああ、……」
「(上の空……)」
流石教授、紅茶の趣味が良い。
かつん。杖で軽くデスクを叩き甘さ控えめのクッキーを乗せた銀のトレイを置く。こうして教授が紅茶を用意する代わり僕が茶菓子を用意するのが暗黙の了解になる程、頻繁に通っていた。
「ああ、教授。自主的に調合がしたいので魔法薬学の教室を使う許可を頂きたいのですが」
「……、……材料はどうするつもりですかな?」
「勿論自己負担です」
「……、……前準備、後片付け、その上我輩の目がある場所で。最後にそれについてレポートと現物提出を行うのであれば、材料も場所もお貸ししよう」
「感謝します」
ベリーの甘酸っぱいソースが甘い生地を和らげる。うん、やはりこの紅茶には酸味のあるこのクッキーが美味しい。
一気に読み切った教授は一息置いて紅茶とクッキーに手を付けた。
「……いつもながら理論的で論点も文句無し。文章構成も見やすく素晴らしい。多少突飛な部分も見られるが事実無理な事ではなく論理的で的を射ている。スリザリンに5点」
「ありがとうございます」
「しかし……何処でこのような知識を手に入れたのかね?特にこの部分……」
差し出された部分は同じ材料、分量でも鍋に入れ始める初めの部位によって効力が異なるという箇所。魔法薬における新事実と言って差し支えないのだろう、数百年前
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