賢者の石
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ああ、すまない……」
食事中に鼠を皿に上げる方が常識知らずとかは置いておいて。
「彼は僕の使い魔(ファミリア)なんだ。食事中にすまないね」
早目に慣れておくれ。そう言い放ち空のティーカップを置いて杖先でカップの端を叩く。底から湧き上がるように紅茶が満ちた。
「む、無言呪文……」
ああ、早く部屋に戻りたいものだ。
解散を指揮され監督生に従いスリザリン寮へ向かう。ホグワーツにある湖の地下にあり、緑のランプの灯る談話室は多少なり陰気な印象がある。
しかも合言葉が純血。いっそ清々しいまでの閉塞的な選民、純血主義にぞっとしない。
「赤と金よりかはマシな雰囲気だが」
好みによるが個人的には緑と銀のコントラストは静かでいい。
早々にベッドスペースに上がりカーテンを仕切る。四人部屋とは何とも。更に拡張魔法で空間をぎりぎりと広げておく。せめて着替えのスペースを作りカーテンに防音、軽めの人避け、侵入者を知らせるアラーム等無表情で杖を振るい続ける。
「《……掛け過ぎじゃない?》」
「ん?効果は重複していないしそれぞれ阻害し合うような配置はしていないけれど?」
「《いや……》」
そうみたいだけど。
しゅーしゅー。蛇は喋る。
ぽすん。蛇がベッドに乗るにしては重い、布の掠れる音が転がった。ずるりと何かが僕の中から抜けていく感覚がした。
「其処開けた生徒皆死ぬんじゃない?」
繊細かつ緻密に組み上げられていくそれは要塞にも匹敵する。才能の無駄遣いってこの事だ。
的を射た悪態と皮肉を何言ってるんだろうコイツとすべて受け流し、最後にベッドに杖を向ける。
「!」
「ウィンガーディアム・レビオーサ《浮遊せよ》」
僅か5cm程ベッドを持ち上げ、そのまま杖を床に向けた。
「フラグレート・スクリペス《焼印 刻め》」
炎を上げることなく赤く焦げ付いた床には結界を意味する古代ルーン文字の魔法陣が刻まれる。それには1番短く強力な呪いと謳われる自身の名も刻まれていて──────
「ねえってば」
「うん?」
漸く顔を上げて確りと目を見た。
僕とは異なる幾らか年上に見える黒髪赤目の美しい少年。髪を右分けにした少年は中性的と言うより男性的な魅力を纏っていた。
長い脚を組んだ少年、否、リドル。
優雅に酷薄に笑んでいるように見えるが、僕からすれば拗ねているようにしか見えない。
「何かないの?折角久しぶりに人の姿になったのに」
「何かって?」
「……もういい、」
意地悪をし過ぎたらしい。本格的に機嫌を損ね、ごろんとベッドに横たわり外方を向いた。
そんな態度だから虐めたくなるというのが分からないのかねぇ……。
少しカーテンの外に目を遣り、ベッドを膝で軋ませた。
ぎし、
「嘘だよリドル」
「……」
「リドルー?……トム、」
「……トム
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