賢者の石
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しみ中身を空にすると思い立つ。
「そんなの僕に頼めばいいじゃないか」
「君が使い走り?ふふ、何のジョークだい?」
「……ふん、借りを作るにはいい機会だと思っただけさ」
気紛れな癖によく言う。コツンと杖でカップと金のトレイを叩く。綺麗な白とウェッジウッドブルーのコキンメフクロウになり、金のトレイは立派な止まり木と精緻な鳥籠となった。手乗りサイズの小さな梟はパチパチと目を瞬かせる。
「……食べてはダメだよ?」
「怒るよ」
「ふふっ……ごめんごめん」
視界の端で黒がちらと見えた。
*****
金色の髪、金色の目。
白のブラウスに黒いアレックスベスト、黒のロングパンツに青が散りばめられたブーツ。
背中まである長い癖髪を青と白のリボンで一つに纏めたその少年は、ぞっとする程に美しかった。
シミ一つない白い肌、頬に薄く血色が滲み、長い金の睫毛に縁取られた目は神秘そのもの。薄い色の唇は潤い、常に薄い笑みを浮かべている。
まるで精緻なビスクドール。されど少年は生きていた。
「人目を気にして早目に来て良かった」
「《違いない》」
その言葉に返答したのは、少年の首周りに絡まった大きな黒い蛇だった。鱗の一つにすら歪みはなく、少年に不思議と似合う美しい蛇。体長はおおよそ2mだろうか、赤い目が冷たく少年を見つめ、舌をちろちろと見せながら鎌首を擡げた。
「一応気配は薄くしてるから学校生活に支障は出ないだろうけどねぇ」
「《……それはどうだろう》」
9と3/4番線ホグワーツ行き列車。
一つのコンパートメントを陣取った少年、マキナは笑う。
「というか君、本当に付いてきたんだ」
「《悪い?》」
「いいや」
「《……とはいえ顔見知りは少しばかり多いし、精精大人しくしておくけどね》」
「ふふ、そうか。君がいいならいいよ、リドル」
終始機嫌がいい。マキナは脇に置いてある鞄に手を付けて本……禁書、〈古代ルーン文字と魔法創造〜語学と呪文〜〉を取り出した。
「楽しみだよ、本当に」
その金の目が妖しく輝く。
終始蛇はしゅるしゅると、少年以外には伝わらぬ声なき声で空気を揺らしていた。
ハリー・ポッター。予言の子。生き残った男の子。
ヴォルデモート卿を退けた英雄。
英雄がグリフィンドール寮に選ばれ嬉しそうに笑う彼彼女らから視線を逸らし、魔法で蝋燭が浮かべられた天井を見上げる。
現在寮分けが行われている。ホグワーツ魔法学校は城だった。嘗て前の世界で治めていた国の城と同様程の広さ。中々に広い。
此処で約7年拘束されると思うと気が重いが。元々自由を好んでいる。放浪が専らの趣味だからだ。……暇は、しなさそうだが。英雄殿を見ていればローブの内側、少し体躯を小さくした彼が手首を締め付けた。
「キサナドゥ・マキナ!」
マキナ・シュテ
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