暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百二十三話 キュンメル事件(その1)
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
帝国暦 488年  8月 16日  オーディン  キュンメル男爵邸 ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ



「では、ヴァレンシュタイン司令長官はピーマンとレバーが嫌いなのですか?」
「そのようですわ、男爵。入院中は良くぼやいていらっしゃいました」
「まあ、本当ですの、ユスティーナ様?」
「ええ、本当ですわ、ヒルダ様。そうでしょう、お養父様?」
「ピーマンとレバーは健康には良いのだがな」

苦笑混じりのミュッケンベルガー元帥の言葉だった。ヴァレンシュタイン司令長官はピーマンとレバーが嫌い、まるで小さい子供のような好き嫌いに皆の笑いが起きた。

「それでは結婚されたら食事には苦労しそうですね?」
「それも有りますけど元帥は無理をされるのでそちらの方が……」
「まるで本当に小さな子供のようですわね、ユスティーナ様」

私の問いかけにヴァレンシュタイン元帥の婚約者、ユスティーナ・フォン・ミュッケンベルガーは少し恥ずかしそうに笑みを浮かべた。彼女は婚約者の事を言われると気恥ずかしいようだ。そんな彼女をハインリッヒは羨ましそうに見ている。

ハインリッヒ・フォン・キュンメル男爵、私の三歳年下の従弟。先天性代謝異常で生まれたときから半ば寝たきりの青年……。銀色の髪、血色の悪い顔、そして肉付きの薄い華奢な身体……。今日は具合が良いらしくベッドでは無く電動式の車椅子に腰掛、居間で話をしている。しかし彼の命はもう長くはないだろう……。

その所為だろうか、レオナルド・ダ・ビンチ、曹操、ラザール・カルノー、トゥグリル・ベグ……、ハインリッヒには強い英雄崇拝の傾向がある。特に多方面で業績を上げた人物に憧れを持つ。

内乱終結直後、メックリンガー提督に頼んでハインリッヒと会って貰った。軍人であり、同時に芸術家であるメックリンガー提督はハインリッヒにとって理想の人物だ。そしてハインリッヒが会いたがっている人物がもう一人いる。エーリッヒ・ヴァレンシュタイン元帥……。軍人であり、政治改革者、当代の英雄。ハインリッヒが憧れるのも無理は無いと思う。

でも元帥とハインリッヒを会わせる事は出来ない。元帥の両親がカストロプ公に殺されたのはキュンメル男爵家が原因だった。より正確に言えば、ハインリッヒが病弱な事が……。

ハインリッヒはその事を知らない。だからヴァレンシュタイン元帥に会いたがる、しかし元帥はどうだろう……。多分全てを知っているのではないかと思う。カストロプ公爵家が反逆に及んだのは元帥がそう持っていったからかもしれない、両親の復讐をするために……。

ハインリッヒには、元帥は内乱終結後の混乱収拾のため多忙であり此処に来る事は出来ないと言ってある。だから代わりに元帥の事を良く知るミュッケンベルガー元帥父娘に来てもらった。彼らはヴァ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ