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フロンティアを駆け抜けて
死霊の誘い
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堪えない。常に派手で人目を引く両親の陰で物言わぬ幼子は、出席者にとって優秀で傲慢な二人への恨み言のはけ口だった。
昔一度そのことを母親に伝えたことがあるが、勝手に言わせておけばいいんですよ、と笑ってのたまったことははっきり覚えている。だから今更、特別思うところなどない。結局僕の気持ちなんて誰も考えてないんだと再認識するだけだ。
それはそれとして、あの人影に触れるとどうなるかわからない以上は無視するわけにもいかない。ポケモンセンターに逃げ込んで助けを求めることは不可能ではないが、得策ではないと踏んでいた。

(どうせこれも、パパが仕組んだくだらないイベントなんだ)

 ジェムに説明が面倒なので言わなかったのは、先の『闇のシンボルハンター』とやらは予期せぬアクシデントではなく、フロンティアが意図的に発生させているシンボル獲得者への試練だということだ。
よってポケモンセンターは実質的に役に立たない。ジェムを追いかけたいところではあるが、人影はジェムの走り去った方から向かってきている。

「……何がフロンティアだ。馬鹿馬鹿しいね」

 人影たちに踵を返し、曲がり角を利用して身を隠しながら走る。ダイバは昔からポケモンバトルの英才教育を受けている。それは単にポケモンを操り、ポケモンを知ることに留まらない。身体能力は元より、小回りを効かせて相手から逃げることも出来る故に10歳の少年とは思えない身軽さと機転だ。だが5分ほど走っても振り切れなかった。人影は、夜の月のようにいくら走っても一定の距離を保ってついてくるようだった。
ならば、とダイバはフロンティアパスを開きジェムの居場所を確認した。

(……どこまで走ったんだよ)

 ジェムは、もうフロンティアの大分端の方にいた。多分何も考えずにまっすぐ全力疾走したのだろう。人影に捕まらないようにしつつ、そちらに向かうほかない。


(僕が最短で全てのシンボルを集めるために、ジェムにはシンボルを保持してもらわないといけない……とはいえ、ここまで手がかかるなんて)


 ダイバの目的は、ただジェムを支配することだけではない。支配するメリットがなければ、あんな見たことないほどお節介で世間知らずな弱虫と関わろうなどと思わない。目を付けたのは、相手がチャンピオンの娘で持ってるポケモンが強かったから、それだけだ。


(……それだけだ。だから、せいぜい僕が行くまで無事でいてよ?)


 モンスターボールを弄りながらフロンティアパスが示す先へ向かう。ジェムを支配しようとしたそもそもの理由を思い出しながら。 
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