死霊の誘い
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『――あの人はいつだって私を元気にしてくれたのに、お前はどうして気苦労ばかりかけさせるんだい』
『――僕の300分の1しか生きていないのに、随分偉そうになったね』
肩耳から、脳髄を貫くような痛みを伴う声だった。ジェムが愛されたい相手からの、突然の怨嗟に耐えられようはずもない。錯乱同然で、耳を塞いで人影から、声から逃げ出す。
「ひっ……!!」
「……サーナイト」
ジェムの見ていたほうをダイバも見たが、特に不思議なものはない。いつも通りの敗者たちが歩いている光景だ。
ならばポケモンによる幻覚あたりだろう。とにかくジェムがまた勝手に動かれると面倒なのは間違いなかった。モンスターボールからサーナイトを出し、子猫の首根っこを掴んで持ちあげるがごとく念力を使わせようとしたが。
だが、モンスターボールからサーナイトは出てこなかった。ボールの中を見るが、サーナイトも困惑しており出てくることを拒否しているわけではないようだった。何度かスイッチを押すが、何の変化もない。
「ジャミング……?」
単なる故障とは到底思えない。状況が出来過ぎだ。モンスターボールも立派な電子機器である以上、遠隔で何かしらの妨害は可能であることは知っていたし、故にこそ彼は基本外では一体は護衛のポケモンを出しておく。だがポケモンセンターを出た直後という隙を狙われた。
ジェムの足は速く、思考を巡らせる間に大分遠くに行ってしまった。自力で走って追いつくのは難しい。故に慌てて動かない。周囲を警戒する。すると異常は自分にも現れた。
『――お前が犯罪者と独裁者の子か』
誰のものとも知らぬ、物心ついた時から聞き飽きた声だった。いつの間にか、自分に向かって幾人もの朧な人影が歩いてきている。
『――ロクに目線も合わせられぬ。いったいどういう教育をされているのか』
『――どうせ世間体と金のために作られた子供だろう、相手にするだけ無駄だ』
虫の羽音のような、耳障りな声。ダイバは狼狽えることなく、人影を見ている。ジェムもこんな声を聞いたのだろうか。
(……だとしたら、とんだ弱虫だ)
幼い頃から両親とともに出席させられた社交界。
母親は自分が生まれる前に、大都市を崩壊させようとしたことがあると聞いている。そしてお縄にかかった母親を父親が金で無理やり釈放させた後のうのうと芸能界に返り咲いたらしい。
父親も20歳になるころには自分の会社を持ち、優秀な人間や取引先には十二分な報酬を渡すが、使えないと判断した相手や意に反する存在は容赦なく切り捨て、潰してきた人だ。
世間一般からは絶大な存在意義を持つがゆえに、敵も多い。そしてそのことを二人とも意に介さず何を言われようとも
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