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フロンティアを駆け抜けて
死霊の誘い
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突き刺すような、冷たい声だった。爺、とはだれのことなのかジェムは気になったが、今聞いても答えてはくれないだろう。目深に帽子を被り直したダイバを見て、仕方なく話題を変える。

「それと、『闇のシンボルハンター』の話は聞いた?もう取られた人もいるみたいだし、気を付けないと……」
「くだらないね。あんな子供だまし真に受けるわけないだろ」
「え、嘘なの?」

 ジョーイさんがあんな嘘をつく理由が思い浮かばないジェム。ダイバがぼそりと聞いた。

「……ジェム。このフロンティアが始まったのはいつ」
「二日前ね」
「……シンボルを取った人ってどれくらいいると思う」
「私とあなたと、あと数人?」
「まだ始まったばかりの状態で、そんな存在が広まるのはおかしい。シンボルの強奪なんてこの施設の目的上最大のタブーと言ってもいいにも拘わらず、特に対処しないばかりか平然と情報を流す。しかも『闇のシンボルハンター』なんてネーミング、普通に考えて犯罪者につけない」
「まあそうかも……じゃあなんであんな嘘を?」
「多分嘘……ではないね」
「???」

 完全に理解が追い付かず、頭の中にハテナマークが旋回する。それを察したダイバは、大きなため息をついた。

「……はあ。結論だけ言うと君みたいな子供は夜道に気を付けましょうってことだよ。お化けを使って子供に言うことを聞かせようってことさ」

 これで理解できるわけがないのだが、もうダイバは説明する気を無くしたようだ。ポケモンセンターの出口へ向かう。さっぱりわからないので後で自分で考えることにして、ジェムも後を追った。
ジェムが自分なりに解釈をするより早く――それは、起こった。

「お父様……?」

 先に気付いたのはジェムだった。日が沈んだフロンティアとはいえ、まだ通行人はいる。その中で、はっきりこちらを見る3つの人影がいた。
人影は、まるで自分を呪いにかけようとするような眼をしていた。まるで生まれたてのゴーストポケモンのように、怨嗟をまき散らしている。輪郭さえ朧なのにジェムの大切な人たちと同じ姿だと理解できた。
偉大な父と、優しい母と、愉快な師匠が、深い不快感を持って自分を見ている。狼狽えだしたジェムを、ダイバは不審の目で見た。自分が全く眼中に入っていないことに謎の苛立ちを覚える。

「……ちょっと。いきなり挙動不審になるのやめてくれないかな」
「え、うん。あれ……」

 ジェムが人影を示そうと指を伸ばしたその瞬間、耳元で囁き声がした。


『――出来損ないが』


 よく知る父親の、全く聞いたことがない声だった。ジェムを凄まじい怖気が襲い、顔面蒼白になる。追い打ちを浴びせるように、母親と師匠の言葉が続く。



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