第7章 聖戦
第157話 聖スリーズの託宣
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触媒とされたかつての肉体の一部を頭上に投げ上げたのだ。
俺の頭上で一瞬、滞空を行う元右腕。その右腕が纏う精霊の強き光輝。その強き光が、俺の動きに合わせて天井に描かれた太陽を掲げる王の絵画を見上げていた貴族たちの目を焼いた。
刹那、シルフを起動。放り投げた俺の元右腕を、ヴェルサルティル宮殿の王太子用の控え室に転移させ、
更に、地球世界で有希に再生して貰った右腕にも強い光輝を纏わせる。
ここまで全てがほんの一瞬の間に行われた行為。
光り輝く腕――。集まった貴族の内の誰かの呟き。
「何事でも、神の御心に従う願いを為すのなら、神はその願いを叶えてくれると言われて居ります」
今の一瞬の出来事が観客となったガリア貴族たちの印象に残るように、声自体に龍気を籠めて一音、一音を正確に発音するように語る俺。
腕を放り上げた右腕は未だ眩い光輝に包まれたまま。立ち位置も変わらず。しかし、その身体の向きはティターニアの方向から、何時の間にか再び観客と成っていたガリアの貴族たちの方向に。
そして――
「神の御心が戦を終わらせる事にあるのなら、戦を終わらせる為に私は全力を尽くしましょう。
神の名を騙る偽りの……ヒトに因り作られた偽りの神を滅せよ、と望むのなら、私は全力で立ち向かう事を誓いましょう」
高らかに誓いの言葉を口にする俺。抑揚を付け、すべての人に今の俺の姿を。俺の言葉を強く印象に残すように。但し、この内容は神に誓わずともやり通すと自らが決めている事。誰に命令された訳でもない俺自身の意志。
故に、この言葉には強い真実の響きが存在する。
「異世界、東方の医療神にして賢者長門有希に貰いしこの輝ける右腕と――」
そして、一拍の間を置き、如意宝珠『護』を起動。
刹那、ガリア貴族たちの注目を一身に浴びて居た俺の右腕の先に一振りの光輝く剣が現われていた。
「ラグドリアン湖の精霊により託された王権の剣に掛けて!」
瞬間、一際強く輝く宝剣。古の吟遊詩人たちに太陽より鍛え上げた不敗の剣……と歌い上げられた剣が、本来の役割の為に使用された事に対して喜びを表現しているかの様。
そう、これは魔法。王権の剣……ケルトの王銀腕のヌアザの帯剣クラウ・ソラスを触媒にした人々の心に火を着ける魔法。
王の印である王権の剣を使用し、本来なら多少の躊躇いを抱いても不思議ではない地上に於ける神の代理人を自称している連中に対しての戦争を起こす気概を発生させる為に、この場に集まったすべての存在の心を震わせる魔法。
一瞬の沈黙。但し、これは嵐の前の静けさ。
今まさに爆発しようとする強き気配を内包した――
しかし!
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