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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第157話 聖スリーズの託宣
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と言うよりは俺と同じ見鬼タイプの術者のように思われるので……。

 相変わらず頭を垂れ、右手は左肩の辺りに。片膝を付いた騎士として最上の礼の形を維持し続けながら、頭の中は現状について考えを回らし続ける。
 ただ……。
 僭王。これは力で玉座を奪い取った人間。本来は玉座に座る事が出来ない人物が力づくで王位を奪った時、その人間の事を指す言葉……だったと思う。
 そう考え、今回の聖戦に関係している王家の状態を思い浮かべようとした俺。

 しかし……。

「続けて第二の託宣――」

 しかし、俺の思考すら間に合わない形で、次なる託宣を語り始めるティターニア。それに俺に対してガリア共通語を日本語に瞬時に翻訳して聞こえる特殊能力がインストールされているとは言え、いくらなんでも香々背男って言うのは……。
 せめてこの場合、ルシファーとでも表現した方が世界観的に言うと相応しいのではと思うのだが――

「この偽りの聖戦が終結した後、彼の地にてデミウルゴスのヤルダバオートが現われる事となります」

 但し、当然の如く俺の考えなど気に掛けてくれる……今のこの場では俺の気持ちよりも優先される事象があるので、例えティターニアでも俺の感情は無視する可能性もある。
 ただ……。
 偽りの聖戦。ティターニアの奴、言い切りやがったな。これは少し痛快かも知れない。この瞬間だけは頭を垂れた状態で、実際に口元にのみ笑みを浮かべる俺。確かにかなりヤバい言葉なのだが、ガリアの正統性を主張するには、これぐらい強い言葉が必要だと思うから。
 少なくとも対外的には少々強硬な意見の方が大衆から支持を得易い事も事実でしょう。

 人間……ロマリアやゲルマニアの指導部。それにアルビオンのレコンキスタの連中も同じ穴のムジナか。こう言う連中の思惑が強く働いている以上、この戦争が、神が望みし聖なる戦と言う訳でない事は間違いない。そもそも、この戦に彼らの言う神の意向が強く働いているのなら、ガリアに対してとっくの昔に神罰が下っている。
 しかし、現実には王太子の影武者()や、王のジョゼフ。イザベラにタバサもピンシャンしてこの場所に居る。ここに神罰を受けている気配を感じる事は出来ない。

 其処まで考えてから、しかし……と、少し自分の置かれた状況を顧みる。
 そう、未だ大丈夫。少なくとも未だ冷静に自らを顧みる事が出来る程度の余裕はある。

 しかし、ハルケギニアに戻って来た途端のこの状況。妙に甘ったるかった地球世界のクリスマスの夜から帰って来た先は、剣と魔法のファンタジーに少しの政治や宗教の色が着いた厄介な世界だったと言う事をあっさりと思い出させてくれましたよ。
 今は地球世界のクリスマス休暇モードだった自らの覚悟を、ハルケギニア仕様に書き換える為の時間。戻って来た
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