第百二十話
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」
「あ……えっと。ショウキさん、狐のお面をした、少年を見ませんでしたか?」
「……さっき会ったけど、消えたよ。知ってるのか?」
「え、ええ、まあ……」
テッチはどうやら、あのクロービスと名乗った狐面のNPCを探しているらしかったが、こちらからの問いかけは要領を得ない。まだ慌てた様子のテッチをジッと見ていると、ようやくバツが悪そうにしてそっぽを向き、一息ついてこちらに向き直った。
「……すいません。あのNPCが……昔の知り合いに、似ていたもので」
「クロービス、か?」
その名前を聞いた瞬間、テッチの大柄な身体がピクリと震えた。その糸目を見開いてまで驚愕した様子で、クロービスの名はテッチに――いや、スリーピング・ナイツにとって、重要な名前であるらしい。
「まあ……いいさ」
とはいえ、その名前がどうだとか、わざわざ問い詰める気はない。痛ましい表情をしたテッチから、顔を背けるのは今度はこちらの番だった。するとテッチの向こうに何やら動く影を見つけて、今度は何だとそちらを注視してみると――
「――――ッ!?」
顔を背けた向こうに、見知った人影がいた――と思った瞬間、既に俺はそちらに走り出していた。テッチを押しのけてまで走り抜き、暗闇の敵地であるにもかかわらず、まるで警戒などしていない全力の走行だった。
「ショウキさん!?」
「待って……待ってくれ!」
テッチの声を既に遥か背後に聞き、俺はその『人影』に対して声を荒げていた。全力で走っているだけではない、高速移動術《縮地》を限界まで使っているにもかかわらず、その『人影』の距離とはまるで縮まらない。
「待ってくれ! 待って――待てぇッ!」
もはや絶叫にも近い叫び声も、『人影』には届くことはなく。高速移動術《縮地》の負担に身体が付いていけなくなり、徐々に失速していってしまう。息も絶え絶えになりながら、それでも走っていた俺に待っていたのは、力尽きてその場に倒れ込むという結果だった。
「――アリシャァッ!」
最後に残された力を全て使い切るかのように、『人影』の――いや、『彼女』の名を叫んでいた。かつてあのデスゲームで、助けられなかった少女の名を。いや、助けられなかっただけではなく、俺を助けて殺人鬼の凶刃に倒れた彼女の名を。
かつての浮遊城でその命を散らしていた、彼女の名を――
『ショウキくん! ショウキくん! 大丈夫! 聞こえる!?』
「……セブ、ン?」
必死にこちらに呼びかけるセブンの声に、倒れていた身体を起こした。どうして自分が大地に倒れていたかは、頬にさめざめと流れていた涙で思い出して。もう一度辺りをグルリと見渡したものの、もうどこにも『彼女』の姿はない。
『ショウキく
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