第百二十話
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後から聞こえてきたのだから。先のユウキではないが、すぐに振り向きながら飛び退くと、日本刀《銀ノ月》を掴む手に力を込める。
「落ち着いてよ。敵じゃないし、罠じゃないからさ」
そこにいたのは、こちらの身長より遥かに小柄な少年。その矮躯を着流しの和服で着こなしながら、表情は狐の仮面で隠していた。武器の類は持っておらず、その狐の仮面を除けば、ただの少年のようでもあった。
「……誰だ?」
ただしその狐面の少年からは、目の前にいるにもかかわらず、まるで気配を感じることは出来なかった。突如として背後に現れたことといい、まさに『幽霊』といっていい存在を目の当たりにしていた。
「僕の名前はクロービス。かっこいい名前でしょ? ……お兄さんの名前は?」
「……ショウキ」
「ショウキ。ショウキお兄さん、かぁ」
『敵じゃない』という言葉通りに、ひとまず狐面の少年――クロービスと名乗った彼は、こちらを襲ってくるようなことはないらしい。反射的に放った質問にも、友好的に答えてくれた様子を見て、案内役のNPCかとも思ったが――どこか、ただの案内役NPCとは違うと直感が告げていた。かと言ってプレイヤー、ないし生身の人間とは明らかに気配が違う少年は、こちらの警戒をよそにぺこりと頭を下げた。
「まずはありがとう、ショウキお兄さん。みんなをここに連れてきてくれて」
「みんな?」
「うん。スリーピング・ナイツのみんなを」
清文は複雑かもしれないけど――などと苦笑するような雰囲気で続けたクロービスは、はっきりとスリーピング・ナイツの名を告げてみせた。
「おい、どういう――」
「それだけ言いに来たんだ。それじゃあ、楽しんでね!」
さらに問い詰めようとしたところ、クロービスはそれだけ言い残して、その姿を消してしまう。まるで最初からその場にいなかったように、この空間のどこにもいなくなった。
「あ、言い忘れてた」
……かと思いきや、クロービスは再び、俺の背後にその姿を現していた。からかっているようにも感じられたが、クロービスは真面目に何かを伝えようとしているようだ。
「ここにいる敵、ちょっと強いから。気を付けてね?」
――そして今度こそクロービスは俺の背後から消えていき、それと同時に、上方から気配を感じた。今度はクロービスではなく、明確な敵意を発しているものだ。
「ッ!」
地下の天井に張りついていたのは、巨大な蜘蛛型のモンスター。まるで人間すらも一呑みにしてしまいそうなほど巨大化しており、真紅に染まった瞳がこちらを見据えていた。
弾丸のように発射された蜘蛛の糸をバックステップで避けたが、寸分の隙もなく糸はこちらを狙って次弾を発射してくる。間髪おかずに発射される糸は、ま
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