第百二十話
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いるから安心して。……まあ、向こうは向こうで、色々と事情があるみたいだけど』
「ま、行くならさっさと行こうぜ。調査とやらにさ」
「ジュン。まだ一人来てないってば」
この調査に来ているのは、当事者であるスリーピング・ナイツのメンバーたちに、居合わせた俺ともう一人。流石に仲間内全員で来るわけにはいかず、この選抜されたメンバーだったが、アバターをこのVR世界に適応させる作業が、どうやら1人だけ遅れているようだった。
「悪い! 遅れた!」
「キリト遅刻!」
そして最後の1人――キリトが姿を表した。本来なら『スリーピング・ナイツのメンバー』ということで、アスナが呼ばれていたのだが、《幽霊囃子》クエストという名を聞いただけでリタイアとなった。元々は『百物語』をもじったシナリオらしく、それらの話題が死ぬほど嫌いなアスナにはクエストの挑戦は難しく、代理に来たのがキリトという訳である。VR世界ならばキリトの方が詳しい、というもっともらしい理由をつけて。
「よし! キリトも来たことだし、出発!」
ユウキの号令によって、スリーピング・ナイツと他二名は足を踏み出していく。行けるのはクエストに関係している場所のみ、という狭いVR世界の為に、目的地は分かっていた。
時刻は草木も眠る丑三つ時。灯りは周囲にある提灯のみであり、場所は何かの神様を奉っているらしい神社。石で出来た階段を登っていく俺たちに、警戒するように狛犬がこちらを見た――ような気がした。
「しかし、もう雰囲気出てますねぇ……」
「なに? もう怖いのあんた?」
「誰もそんなこと言ってないってば!」
百物語――百の怪談を話しているうちに、本物の妖怪が現れるという怪談――がモチーフのクエストの上に、その舞台は和風VRゲームと謳うアスカ・エンパイア。クエストの名前は《幽霊囃子》と、完全に舞台は和風ホラー映画の様相を呈しており、アスナでなくとも怖いものは怖い。というか、歩いているだけでそれなりに怖い。
「でも確かに、アスカ・エンパイアにはこういうクエストもあったね。懐かしいなぁ」
「…………」
誰からともなく神妙な面もちとなっていき、どこからか何かが飛び出してきそうなその雰囲気に、何とも言えない緊張感が辺りを支配する。しかしてそんな雰囲気を感じていないかのように、相変わらず呑気に語りかけるテッチに安心したのも束の間、このVR世界に来てから唇を真一文字に結んで、一言も発しないシウネーに現実に引き戻される。
「……ユウキはどうだ?」
「ま、前はボクもよくここで冒険してたし! 大丈夫、大丈――」
『あ、そうだ』
「ひゃっ!?」
何の予兆もなく響き渡るソプラノ調の声――というかセブンの声に、周辺に気を配り
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