魔法を使ってみたい!後編
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魔力が、ある。私にもある。そのことはどれだけ嬉しいことだと思う?
すっかり忘れていてもおかしくないけれど、私には前世がある。愚かで弱い、ただの、ちょっと達観してような可愛くない女の子の記憶がある。私自身、「桃華」なんて泣きわめいてうるさいから殺してしまったし、昔だしで薄れすぎて大した記憶もないんだけれど。
あの世界には魔法なんてただの空想だったよね。そういう記憶があるからもしかして、と考えないでもなかったんだ。私がとっくに殺したつもりの弱い私のせいで魔法が使えないんじゃないかってさ。
でも違った!私には魔力がある!
問題はどんなに完璧に呪文を唱えたってなーんにも発動しないこと、どんなに動きを模倣しても魔力を使う特技が使えないこと!うーん……出力装置が壊れてるテレビとかでアンテナが壊れてないようなもの?違うかな?
それとも、蓋の開かないペットボトルに水が入ってるみたいな?そもそも蓋がないかも?でもさ、今回わかったよね!私にもその「水」があるって!
「あら、そんなところでどうしたのよ」
「考え事だよゼシカ。どうやったら魔法が使えるんだろうって。今更普通の方法試したって使えないのはわかってるし」
「……アテはあるの?」
「直接魔力の塊をぶちまけるとか……かな。腕切ってさ、傷口から」
「やめなさいね?」
「……最終手段かな」
正直この方法しか思いついてないけどね。でも自傷なんかわざわざしたくないのは確か。痛いし、自分で流した血は気味悪いほどドス黒いし……。魔物に斬られたりしたら鮮血なのにな。あれだ、動脈血とか静脈血とかいうやつなんだろうね。よくわからないけど。
他に……他に。思いつくならやってるんだよなぁ。魔力があるという前提でいけば……ほかの方法、あるかな?
「杖を媒介して魔法を唱えるならちょっとはいけるかなぁ」
「あら、杖を?」
「うん。杖って強力な補助効果があるんだよ。ただ、持つだけじゃなくて腹に突き刺して無理やり出力できるようにしたらきっと」
「ダメよ」
「やっぱり?」
これも要するに血と内部で媒介した手段だし。うーん……。
「あたしはエルトに頼むのがいいと思うのだけど……」
「え、なんで?」
「デイン系には複数人で唱える魔法がある、と聞いたことがあるの。それなら試す価値はあるかもしれないわね」
「……ミナデイン?」
「たしかそんな名前ね」
「あー……それって伝説の勇者様御用達の呪文だよね」
っていうか、それを言ったらそもそもデイン系が使えるというだけで勇者様認定でいいけどね。……え?私の親友勇者なの?勇者エルトか……普通にいそうな名前だね。
顔がかっこいいだけじゃなくて高スペックお人好しなエルトが勇者。しっくりくるなぁ。羨ましい!
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