暁 〜小説投稿サイト〜
提督はBarにいる。
提督の採用テスト・問2-4
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うか。」

 早霜は悪戯っぽくクスリと笑うと、早速準備を始めた。取り出したのはカナディアン・クラブのボトル。結構有名なカナディアン・ウィスキーだな。ライ麦を主として、他の香りを付けたフレーバードウィスキーと、トウモロコシを主として作られたウィスキーをブレンドして作られ、一年以上の熟成をする事でも有名だ。……え、バーボンじゃねぇのかだって?バーボンはトウモロコシの割合が50%以上で80%より下の物を指すんだ。カナディアン・クラブの材料のウィスキーは50%以下だからバーボンではない。味と香りのバランスがよく、飲みやすく、カクテルにもしやすい。有名なカクテルの『マンハッタン』のベースリキュールとしても有名だ。

 そんなカナディアン・クラブを、氷を入れたコリンズグラスに30ml。そこに出てきたリキュールは、俺の店のボトルじゃねぇな。

「これは私の私物のリキュールです。中々面白いフレーバーですよ。」

 早霜がその瓶の蓋を開けた瞬間、懐かしい『あの』香りが漂ってきた

「こ、これは……!」

「桜か!」

「そうです。桜の花弁と葉を漬け込んだ桜リキュールです。」

 いやはや、桜リキュールとは恐れ入った。それを15ml、カナディアン・クラブの入ったグラスに注ぐ。仕上げにトニックウォーターで割り、清涼感と微炭酸で爽やかさをプラス。

「出来ました、『C.C.桜(カナディアン・クラブ・さくら)』です。」

 口に運び、香りを楽しむ。桜の芳醇な香りと、熟成されたC.C.の香りが堪らない。これは……いいな。見ると、那智の目にはうっすらと光るものが。日本が恋しくなったか。生まれも育ちもブルネイのはずだが、やはり魂の奥底に眠る記憶に響いたのかな。

「いや、素晴らしいバーテンぶりだったよ早霜。文句なしの合格だ。俺の忙しい時は、代理店長頼んだぞ。」

「フフフ……承りました。」

 那智が不意に立ち上がると、飲み代をおいて立ち去ろうとしていた。

「少し飲みすぎたようだ。そろそろ寝る事にするよ。早霜、『美味かったぞ』。ではな。」

 涙を見られたくないから強がっちゃってまぁ……。こっちの小さなバーテンは、

「う……うわああぁぁぁぁ……!」

 嬉しさのあまりに泣いちゃってるし。翌日、事情を聞いた木曾に弄られて顔を真っ赤にしていた早霜が強烈に可愛いと思ったのは、また別のはなし。
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