提督の採用テスト・問2-2
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
そういや、早霜のここで働きたい動機を聞いてなかったな。
「なぁ早霜。」
「何でしょうか?」
「何でいきなりBarで働きたい、なんて言い出したんだ?」
幾ら人型駆動兵器と巷では揶揄されようが、艦娘とて軍人だ。毎月の給料は支払われるし、民間からの依頼をこなせば特別ボーナスが入る。金銭的には困っていないハズだ(一部を除いて)。
「そうですね……一言で言えば…夢、でしょうか。」
「夢?」
カクテルを作る手を止める事なく、早霜は続ける。
「私、自分の作ったお酒を飲んで『美味しい』と言って欲しい方がいるんです。それに、もしもこの戦争が終わって平和になったら……小さなBarを開きたいんです。」
成る程、要するに早霜の想い人ってワケか。
「しかし駆逐艦の連中も進んでいるんだなぁ。」
「……? 何がですか。」
不思議そうに首を傾げる早霜。
「…だって、彼氏だろ?飲ませたい相手って。いやいや、重巡や戦艦、空母や軽巡なんかには浮わついた話も出ていたが、駆逐艦にもオトコがいる奴がいたんだなぁ。」
早霜は開いた口が塞がらない、とでも言いたげな表情で目を丸くしている。
「あん?どうした早霜。早いトコお代わりくれよ。」
「あっ、あぁ……そうでしたね。」
『アーティスツ・スペシャル』は確かに美味かったが、いかんせんカクテルグラスじゃ量が少ない。早霜は何やらブツブツと言いながら作業を再開。使用するのはブラックニッカの8年物。北海道と宮城の2ヶ所の蒸留所で8年以上に渡って熟成されたモルトを、世界でも稀少なカフェ式蒸留機を用いて香り高く仕上げられたカフェグレーンを絶妙にブレンドした逸品だ。それをシェイカーに30ml。更に加えるのがレミーレッド。有名なコニャックメーカー・レミーマルタン社のコニャックに桃、杏、赤すぐりを配合した女性でも飲みやすい円やかで甘口のリキュールだ。更にカクテルの名脇役・オレンジビターズを1dash加える事で柑橘の香りと仄かな苦味をプラス。これをシェイクしていく。
「しっかし、いい手際だな。練習でもしてたのか?」
「えぇ、まぁ。夕雲姉さんや巻雲姉さん、長波姉さんや清霜相手なんかに作ってましたから。」
氷を入れたタンブラーにシェイクし終えた物を注ぎ入れながら、早霜は受け答えしている。そして取り出したのはコーラ。プシュ、といういい音と共にプルタブを起こし、タンブラーに注ぐ。仕上げに手早くカットしたオレンジをカクテル・ピンに刺し、飾って完成。
「『赤ひげ』です。すぐに酔ってノビてしまうのですが、巻雲姉さんのお気に入りです。」
……何となく味の想像は付くが、まぁ頂こう。
「うん。予想通りに甘いな。」
飲みやすいには飲
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ