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提督はBarにいる。
提督の採用テスト・問1
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酒を濾過した事に依るものです。……従ってこれはテネシー・ウィスキー。有名な銘柄には『ジャック・ダニエル』等がありますね。」

 ほぅ、やるな。では左のグラスは解るかな?

「続いて左のグラスですが……これは海軍にはとても縁深い物ですよね。この強烈なスモーキーフレーバー、ダルマの大将……サントリーオールドですね。」

 やはり此方は分かりやす過ぎたか。しかし、この2種類にどんなツマミを合わせるかな?これには彼女自身のセンスと舌が問われるぞ?

「じゃあ、テネシーの方から聞こうか。どんなツマミを合わせる?」

 ウィスキーのツマミというのは案外難しい。甘い物から塩辛い物。フルーツ、菓子、乳製品、肉、魚介。何でも万能に合うようでいて、その実、フレーバーや味が食材と喧嘩してお互いの良さを消しやすい。どれだけそのウィスキーを理解しているか?ここがチョイスの大きなポイントだろう。

「そうですね……。」

 彼女はしばらく熟考し、やがて口を開いた。

「このテネシーは中々甘口ですから、合わせるとしたらドライフルーツ……オレンジピールのチョコがけなど如何でしょう?」

 ふむ、悪くない。ウィスキーのツマミを選ぶ際、定番と言われている選び方に、『甘口には甘いツマミを。辛口には辛いツマミを。』というのが鉄板とされている。そういう点では悪くないチョイスと言えよう。しかしここで、俺も意地悪な条件を出す。

「しかしな、ウチの鎮守府の中には甘いツマミを好まない艦娘が少なからずいる。そういう場合、このテネシーに何を合わせる?」

 あり得ないシチュエーションではない。

「そう…ですね……。定番的な物としてはやはりナッツやチーズ、奇をてらった物を好む方であれば牡蠣の薫製……それをオイル漬けにしたもの等も良いかも知れませんね。」

 おぉ、牡蠣の薫製とは。その発想はなかったな。アーモンドやピスタチオ、カシューナッツ等のナッツ類はその濃厚な味でウィスキーの味を阻害する事なく、寧ろその仄かな塩味でウィスキーのフレーバーを引き立てる万能に合うツマミだ。チーズもまた、ウィスキーのフレーバーを引き立てつつ、自らもその隠れたフレーバーが引き立って互いを高めてくれる良い組み合わせだ。しかし牡蠣の薫製とは。今度試してみるか。

「どうやら、かなり勉強しているらしいな……早霜。」

 夕雲型駆逐艦の17番艦、早霜。普段ミステリアスな雰囲気を漂わせる彼女だが、どうやら優秀なバーテンになりそうだ。

「フフ……ありがとうございます…。」

 その少しだけ不気味な笑い方を直せば、だが。
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