第三章 夢魔と半妖精に紡れる絆
虚像-フェイク-part1/誇りと愛の狭間で
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あり、戦とはまた違った苦戦の日々だった。しかしそれでも、軍にいた頃よりも穏やかな日々だった。
子供たちも自分を「ヘンリー兄ちゃん」と呼び、心を開き始めていた。
「ねえねえ兄ちゃん、魔法見せて!」
ある時、村の子供の一人であるサマンサが魔法を見せてくれと頼んできた。神聖な魔法を芸のように見せるのは気が引けたが、これも子供たちのためと思い、得意な風の魔法で小さな竜巻を起こして見せた。杖は一応没収されていたものの、ここに来たばかりのころよりも態度が軟化したのを見計らってガル船長が特別に返却したのだ。
「兄ちゃんスゲー!」
「そ、そうか?」
初級の魔法だから、相手が平民の子供だとしても誉められて少し謙遜したくなる。
「へえ、あんた結構ノリがよくなったんじゃないかい」
そんなヘンリーを見て、森の中から戻ってきたマチルダが目を丸くした。一緒にサムも同行し、手には地下水も握られていた。そして二人の周囲に、大量に買ってきた食料袋が魔法の力で浮遊している。
からかわれているようにも聞こえ、ヘンリーは気まずげに「うるさい」と一言呟く。
「お帰りなさい、マチルダ姉さん」
「おう、マチルダの姉さん!どうだい?回りの様子は」
マチルダとサムの元に、テファと空賊クルーの一人が出迎えてきた。
「地下水とあたしとで、近くに住み着いてる亜人たちを始末してきたよ。あとタルブからも食料を買ってきた」
「俺様はパシリかよ。あの旦那に着いてきたかったな」
「うっさいぞバカナイフ。文句いってないでそのまま魔法で荷物運べ」
愚痴る地下水にサムが以前の恨みできつく言ってきた。
「マチルダ姉ちゃん、シュウ兄まだ帰って来ないの?」
「…」
エマの口からシュウの名前が出てきて、ウエストウッドの住人だったテファやマチルダ、そして他の子供たちの空気が重くなった。
「エマ、シュウ兄に何か悪いことしちゃったのかな?だから、戻って来ないのかな?」
「…そんなことないさ」
マチルダは身を屈めてエマを抱き寄せた。
「そうだよ!シュウ兄が戻ってこないからエマが変なこと言うんだ!」
エマが言った一言に、村の子供のジムが、未だ戻らないシュウに不満を漏らす。
「なに言ってんだ!シュウ兄は頑張りすぎてたじゃないか。戻りたくても戻れないかもしれないだろ」
だがそれをもう一人、村の少年のジャックが反発した。
「戻れないってどうしてだよ!」
「知らないよ!怪我をしたからとか…」
「でもエマが変なこと考えてんじゃん!テファ姉ちゃんも兄ちゃんがいなくなってから…」
「みんな、喧嘩はそこまでにして!」
ヒートアップするあまり、喧嘩に発展したのを見かね、テファが二人に注意を入れる。
「姉ちゃんは嫌じゃないの!?兄ちゃんが戻ってこないこと!」
逆に注意を受けたジムが、テファ自身がどう
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