第75話 戊申最後の戦い
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蝦夷政府は完全に包囲されてしまっていた。
時代はすでに明治と元号が変わり、明治2年4月には新政府軍が蝦夷地に上陸し、5月には総攻撃をかけてきたのだった。
蝦夷政府の主要な砦は次々を落とされ、残りは五稜郭のみになってしまっていた。
「もはや、これまでかな?」
榎本は唇を噛みしめた。が、まだ戦意を失っていない男が一人いた。
土方歳三である。そして、新政府軍側には、参謀としてまんまと潜り込んだ坂本龍馬がいた。
「坂本さ、蝦夷も時間の問題でごわすな」
黒田はにこりと微笑んだ。
「そうだね。これで日本も落ち着くじゃろう。では、わしは、お暇させていただくぜよ」
龍馬は飄々と作戦本部の部屋から出て行こうといている。
「え?どこに行くのですか?」
黒田はその姿を見て焦りながら聞いた。
「わしにはわしのしたい事ありまけ。また、お互い生きていたら会えるきに、さらばぜよ」
龍馬は部屋を出ると同時に走り出し、馬に飛び乗ると銃弾交わる戦場を走り抜けた。
土方もその時、丁度、その場で旧新撰組を率いて戦況を見つめていた。
「副長、命令はまだですか?」
いきりたっている隊士が土方に聞いた。
「まだだ、まだ、突入する時ではない」
土方は冷静な口調で答えた。が、すでに、蝦夷政府軍は壊滅寸前であった。
(こいつらを生かさなければ)
土方はそう考えていた。今まで、自分に付いてきた部下たちを犬死だけにはしたくないとそういう事を思っていたのだ。
その時、1頭の馬が戦線から飛び出した光景を土方は目にした。
「あ、あいつは!!」
土方もまた馬にまたがった。
(間違いない。あいつは坂本龍馬。何故、奴がここにいたのかは、わからんが、逃がすわけにはいかない)
「副長、どちらにいかれるのですか?」
「突撃ですか?」
部下たちが色めきだった。
「ここも時期落とされるだろう。お前たちは降伏しろ、無駄に死ぬことはない。
いいな、俺がここを去ったら降伏するんだ」
土方は馬上で部下たちに叫んだ。
「では、副長はどちらに向かわれるのです?」
部下たちは土方を見つめた。
「俺は俺の誠にしたがって動くまでだ。生きていたらまた逢おう」
土方は、部下たちの制止を振り切るように馬を走らせた。
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