事の始まり
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あれは、そうだ。ビリヤード台とダーツボードと共に麻雀卓を入荷して半月ほど経った頃だ。その日は珍しく客がなく、暇だった俺は雀卓に合わせて購入した革張りの肘掛け椅子に腰掛けて、麻雀漫画の『むこうぶち』を読んでいた。打つ相手が無いので無用の長物と化してしまっているが、この椅子自体の座り心地は悪くない。麻雀は長時間座って行うからな、少し位は贅沢しても構わんだろう。
「ばんわ〜っ、……ってお客さん居ないじゃん。珍しいねぇ。」
「むぅ〜っ、せっかく那珂ちゃんの限定ライブやろうと思ってたのにぃ。」
「ま、まだ歌い足りないんですか?あれだけ歌ったのに……」
そんな話をしながら入ってきたのは川内・那珂・由良。それぞれ普段は艦隊旗艦として遠征や近海の対潜掃討、鎮守府内の警備を担当している軽巡達だ。しかし今日はいつもの制服ではなく私服だ。どうやら、街に出てカラオケでも歌ってきた帰りらしく、若干だが頬に赤みが差している。
「おぉ、珍しい取り合わせだな。軽巡の旗艦が3隻揃い踏みとは。」
俺も読書を切り上げ、カウンターの中に戻る。
「いや〜っ、明日たまたま3人の休みが被ったから街に遊びに行ったんだけどさぁ。」
苦笑いしながらアベイ頂戴ね、と注文してくる川内。
「那珂ちゃんがカラオケ行ったらマイク放してくれなくて、楽しめなかったんですよ。」
お陰で酔いも冷めちゃいましたよ、と不満げな由良。
「だってだってぇ、最近地方巡業ばっかで全然歌えてなかったんだもん。アイドルとして由々しき事態ですよこれはぁ!」
ムキー!と苛立ちを隠さない那珂。どうやら、ウチの那珂は他に比べて気が短くて直情型な所があるらしい。
「さてと。川内からは注文を承ったが、由良と那珂はどうする?」
「じゃあ、私はコーヒーカクテルと……何かそれに合わせた甘い物を。」
「那珂ちゃんは焼酎ロックと鮭とば!バッキバキの硬い奴ね。」
由良の注文はともかくとして。
「しかし那珂。お前ホンットにオヤジ臭い酒だなぁw」
川内と由良の注文を支度しながらツッコミを入れる。
「ホントだよねぇwアイドルの娘が飲む感じじゃないもんねね。」
「お仕事帰りの一杯を引っ掛けるお父さん、って感じの注文ですよね。」
二人もそれに同調するように那珂をからかう。
「もぉ!川内ちゃんも由良ちゃんも酷いんだ?提督はいつもの事だから別にいいけどさぁ。」
途端にむくれる艦隊のアイドル(自称)。苦笑いしながらも那珂のキープボトルである「黒霧島」のロックと、軽く炙った鮭とばを出してやる。
お次は川内ご注文のアベイか。ドライ・ジンが40ml、オレンジジュースを20ml、香りと仄かな苦味を付ける為にオレンジの果皮を漬け
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