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フロンティアを駆け抜けて
約束の証明
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 お互いの鈍色の光弾がぶつかり合い、相殺する。直観的にお互いのポケモンは前に出ていた。傷ついた両顎を振るうクチートと、両腕を失い身一つで突進するレジスチル。
鋼タイプ同士、最後に繰り出す技は一緒だった。


「「『アイアンヘッド』!!」」


 顎と頭がぶつかり合い、硬いものが砕ける音がした。急激な温度変化に晒され、本来の硬度を維持できなくなったレジスチルの点で出来た顔のような部分が砕け落ちる音だった。

「……お見事」

 仰向けになって倒れたレジスチルを見て、ジャックは満ち足りた笑顔を浮かべた。20年前の約束は、守られていることを実感できたからだ。そして、自分の感情も自覚した。

「君は、自分の父親の言葉が正しいことを証明した。ついこの間、僕と彼がした約束を聞くかい?」
「……うん。聞きたい」

 ジャックのついこの間は昨日の事であったり50年前のことであったりするが、今言っているのはジェムが生まれる前、まだジェムの父親が旅をしていたころの話だ。ジェムもそれを察し、今まで語られなかった事実を聞こうとする。

「僕は伝説のゲンシカイキによって大体3000年前から生きているっていうのは知ってるよね。君には言わないようにしてたけど、これだけ生きてるともうこの世の全てが退屈になってくるんだ。今までに見た者の繰り返し、同じ過ちを繰り返す人たち。それだけ固い絆で結ばれても、先にいなくなってしまう友人たち……ずっとそばにいてくれるのは、伝説のポケモンだけ。僕はこの世の全てに絶望していたんだ」
「私にはわからないけど……ジャックさんがたまに辛そうなのは、知ってたよ」
「察しのいい子だね。だから僕は、20年前にこの世界をゲンシカイキの力で滅ぼそうとした。そうすれば誰かが、いや君の父親が黙っていない。彼なら僕の中にあるゲンシカイキを壊してくれる。それで僕は、永遠の眠りにつくことが出来る。そのはずだった」

 まだ20年も生きていないジェムには到底理解できない感情。自分の尊敬する人がかつて世界を滅ぼそうとしたことを聞かされて、胸が苦しくなる。

「お父様は、どうしたの?」
「うん。そのことを彼に言ったら、自分で死のうとしちゃだめだって言ったんだよ。僕の気持ちなんてわからないのに。……いや、僕がポケモンバトルが好きなことだけは、わかってたからかな。だから彼はこう言った」

 ジャックは胸に手を当て、歴史を紐解く吟遊詩人のように昔の言葉を詠みあげる。

「俺が、誰もが楽しいポケモンバトルを出来るようにこの世界を変えていく!人を笑顔にするチャンピオンになって!誰かを笑顔にしてみせる!そして俺に憧れてくれた誰かがまたチャンピオンにでも何でもなって、志を受け継いでくれればいいんだ!
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