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フロンティアを駆け抜けて
約束の証明
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 けらけらと愉快そうに笑うジャック。それを見ていると、おくりび山で毎日相手をしてもらった時を思い出す。ずっと勝てなくて、時には負けて悔しくて泣いたりして。彼はそれを慰めて。その後父親の代わりに笑わせてくれた。この笑顔をくれたのは君のお父さんなんだよといつも言っていた。ジェムが父を強く尊敬しているのは、彼のおかげでもある。

「……ルリ、間合いを詰めて!いつでもアレが撃てるようにしててね!」
「確かにさっきの技はなかなかだったけど、出来るかな?」

 激しい水の噴射と、冷たい風の流れ。緩急の強い動きを繰り返すマリルリに最初こそ出遅れたが、伝説の威光を持つスイクンは徐々に対応し、拳の間合いに入らせない。そして時折放たれる極寒の光線が、マリルリの体力を削っていく。
マリルリの体が徐々に凍っていき、動きが鈍くなり、間合いから遠ざかる悪循環だ。

「それじゃあとどめかな!『冷凍ビーム』!」
「今よルリ!ジャンケン……!」
「そこからじゃ届かないよ?」

 マリルリとスイクンの間合いは、およそ4mまで開いていた。マリルリの拳では到底届かない。それでもマリルリはジェムの指示に従い、腕に力を籠める。口に冷気を込めたスイクンが、蒼い光線を放ちまっすぐにマリルリを狙う。力を溜め、太くなった光線は避けられる速さではない。
ジェムはその状況で――確かに、笑った。

「『パー』!!」
「ルリー!!」

 マリルリが掌にして突き出し、ハイドロポンプと同等の勢いで『アクアジェット』が噴き出す。それは蒼い光線にあたって凍り付き、なおも放たれる水は光線を凍りながら食い尽くすようにスイクンの元へ伸びた。凍った『アクアジェット』がスイクンの顔を直撃する。実質巨大な氷柱が爆発的な速度で突っ込んできたようなものだ。追い風など関係なく壁まで突き飛ばし、スイクンの体が倒れる。

「へえ……すごいね。まさか『アクアジェット』があそこまでの威力を持つなんて。『貯水』の特性を持つスイクンでも、凍った水は吸収できない……よく考えたね」
「知らない水ポケモンがいたら水技は全く効かないかもしれないことは頭に入れておきなさいって、ジャックさんに教えてもらったもの」
「よくできました。80点をあげよう。――でも油断するのはまだはやい!」

 スイクンにはもう立ち上がるほどの力は残っていない。だが、防御に優れるが故に戦闘不能にはなっていなかった。蒼い目が輝き、『神通力』が発動する。その技は念動力によってマリルリの体を穿ち、水風船を割ったように破裂した。
もちろんジャックにもスイクンにもマリルリを殺すつもりなどない。予想外の光景に、一瞬動きが止まる。

「……まさか」
「油断したのはそっちよ!私達の全力、見せてあげる!」

 
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