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フロンティアを駆け抜けて
約束の証明
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「行くよ、ルリ!」
「現れろ、王潤す清水運びし水の君!スイクン!」

 ボールから出ると同時に、北風が吹いた。やはりというべきか、ジャックの先鋒を務めるのは伝説のポケモンだ。蒼と白によって作られた体のラインは、美しさを超えて神々しくすらある。




「まずは無難に行こうか、『オーロラビーム』!」
「ルリ、『アクアジェット』!」
 
まずは小手調べ、というふうでスイクンの周囲の空気が歪み、極冷の風となってマリルリに吹きつけるのを、尾から飛び出る水流によって横っ飛びに躱すマリルリ。

「だったら『かぜおこし』だ!」
「一気に突っ込んで!」

 スイクンの象徴たる冷たい北風が広範囲に吹き付ける。ジェムはわずかに身震いしたが、分厚い脂肪を持つマリルリなら大したダメージはない。再び瞬発力のある動きでスイクンの横に潜り込む。

「へえ……伝説相手に強く出たね」
「悪いけど、ジャックさんでも臆さないわ!ルリ、ジャンケン『グー』!」

 緩急の激しい動きに、スイクンの体が一瞬強張る。その隙を見逃さず、『腹太鼓』の攻撃力増強を腕一本に集約した拳で腹の部分に強烈な一撃を加える。スイクンの体が大きく吹き飛んだ。だがジェムは油断しない。

(まだ全然本気じゃない、今のは打たせてくれただけ)

 技自体もその威力も、伝説の本気とは思えなかった。事実一撃を受けたはずのスイクンは、体の周りの風を操りふわりと着地し、毅然とした目つきは鋭さを増す。

「さすが君らしい、可愛らしい攻撃だね」
「褒めてるのかしら?だけど威力は可愛くないわよ!一気に畳みかけて!」

 マリルリが吹き飛んだ方向にジェット噴射で近づく――その勢いが、急激に弱くなった。部屋の中に、体の芯から冷えるような冷たい強風が吹き始める。それはマリルリの行く手を阻む逆風となり、スイクンにとっての追い風となった。
アクアジェットの噴射は一瞬だ。風の勢いに負け、ゴロンゴロンと丸い体を転がすマリルリ。スイクンの『追い風』だ。

「なら、可愛いだけじゃなくなった弟子にはそれなりの対応をしないとね。北風の象徴たるスイクンの力、見せてあげるよ」
「っ……来るよルリ!」

 スイクンが、加速する風に乗って跳ぶ。マリルリはまた横に飛ぶが、スイクンは流れるように追随し、狙いを定める。その口に、青い光が迸る。

「『冷凍ビーム』!」
「『身代わり』で逃げて!」

 風に邪魔され、身動きを制限されるマリルリは咄嗟に水の分身を作って後ろに下がる。それに冷気の光線が直撃し、一瞬で凍り付いた後粉砕された。

「判断も速くなったね。男子三日会わざれば括目して見よとはよく言ったもんだよ」
「私は女よ?」
「冗談冗談」


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