16話「略奪共同体」
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僕はそいつを見つけた。
この超巨大難民キャンプと言っても良い場所の中央に居る。
パイプを片手に……タバコを吸ってる紳士風のゴブリンだ。形の良い白い髭が生えていて、長年生きたような貫禄がある。
『オグド隊長さんですぞ!』
『貴族の家、産まれだけど、没落して傭兵に身をやつした人ですお。
趣味は確か騎士殺しだったお。宗教で洗脳した少年兵を使うのが大好きな男ですお』
『今じゃ、超有名傭兵団の長という訳だ』
没落して、今じゃ略奪共同体の長か。
負け組から成り上がるという点では共感できるけど、今回は敵なんだよな、このゴブリン。
やっている事も洗脳とか鬼畜すぎる……。
『犬さん、お前が言うな』『不良を洗脳したのは犬さんも同じだお……?』
意味が分からんツッコミ入った。僕はなんて不幸な三歳児なのだろうか。
モーニャンの尻尾をモフモフしたい。あれは良い尻尾だ。
「大変だぁー!隊長ー!
東方諸国が俺たちを討伐するために、大規模連合軍を組みやがったぁー!」
オグドがいるテントに、一人の若いゴブリンが入ってきた。
豪華な身なりをしているから、きっと偉い奴なのだろう……富裕層から奪った略奪品を纏っているだけの下っ端Aの可能性もあるが……。
報告を聞いたオグドは一回、口からタバコの煙を吐いて、白い輪っかを作り上げ――
「……バンド、逆に考えるんだ。
東に凄い敵がいるなら、こっちも凄く西に逃げて人間の国を侵略すれば良いやって考えるんだ」
「いや、隊長!?
途中に、馬車を運用し辛い地形がたくさんありますよ!
それに人間どものエルド帝国は、十万の大軍を定期的に動員して、遊牧民族と戦争しているから、こっちの物量で圧倒できないし……現地ではゴブリンの兵士が補充できません!
兵力が損耗したら回復できないんです!」
僕の所属している国はそんな酷い戦争やっている国家だったのか。
どことなく、国庫が空になって、商人たちが重税で悲鳴を上げていそうだ。
役人は目立つ場所に課税するから、商人とか真っ先に犠牲になる気がする。
「なら、遊牧民族の皆さんに手紙を出して……もっと積極的に攻めて貰えばいいやって考えるんだ。
エルド帝国に大きな戦線が二つできれば、こちら側にかかる負担は軽減されるはず。
攻城兵器は……一度破棄するしかないが、このまま飢えて死ぬよりマシだろう」
「ですが隊長!こっちの構成員は、非戦闘員がほとんどを占めるのに無理ですよ!
勝ち目なんてありません!」
「……これ以上、ゴブリン同士で殺し合うのはやめなければいけない。
失敗するにせよ、成功するにせよ。
ゴブリンに迷惑をかけるより、人間どもに迷惑をかけた方が良いだろう。
……この戦争は長く続きすぎた……そろそろ終わらせるべきだ、私たち
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