幕間 15話「昔の狐娘、犬さんと出会う」
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って天国だよね。
弟にも食べさせてあげたい。
そういえば、この一歳児の名前を知らないや。
「ねぇ、君はなんて名前なの?
私はモーニャンだよ!教会のウンコ僧侶のせいで貧乏になった神社の巫女さんやっているの!」
「もっふ!」
「モッフって名前なんだね!
凄く共感できて素敵だよ!私の弟の名前がモッフルだし!
今度は弟も連れてきていいかな?」
「もっふ!」
「やったー!OKってことだよねー!
もっと肉を恵んでくれたら、弟を子分にしても良いよ!
私、お姉ちゃんだから許しちゃう!」
「もっふぅ?」
それにしても、このモッフ君の衣服って良い服だなぁ。
青色のジャケットにボタンが付いていて、貴族様の洋服みたい。
私のボロボロの古着と違って新品だよ。ズボンにもシャツにも破れた箇所が一つもない。
……どうやって猪を倒したんだろう。一応、腰の鞘に小さなナイフがあるけど、これでイノシシを殺すのは無理だよね?
「おい!犬!こっちに来い!
はよ来い!どこだぁー!出てこいやー!」
差別感たっぷりの男の声が、遠くから聞こえた。
獣人をここまで見下す発言ができるのは……人間?
に、逃げなきゃっ……!
1匹見たら100匹いるっていうゴキブリみたいな生き物だから怖いよ!
「もっふるぅー!」
何故かモッフ君が勇ましかった。
逃げるどころか……声の方向へ、鞘からナイフ出して構えて走り出したんだ。
私は急いで、周りの肉を拾い集めて、モッフ君を止めようと声をかける。
「あ、駄目だよ!人間に歯向かったら酷い事になるよ!」
私の言葉を聞いても、モッフ君は止まらない。
木々の向こうへと、その小さな姿を消してしまった。
モッフ君を助けに行こうかと思ったけど、とりあえず、可能な限り肉を持って逃げる事にした。
人間って倒しても倒しても、次から次へとやってくる生物だから、逃げた方がお得だよ。
薄情かもしれないけど、家には飢えた弟とか、飢えた近所の友達とかがいるの。
だからごめんね……そんな感じに懺悔した私の狐耳が――恐ろしい悲鳴を捉えた。
「へへへへ!獣人に産まれた身を呪うんだな――ぎゃぁー!俺の左腕がぁー!」
「ば、化物ぉー!」
「ぎゃー!たすけてぇー!」
「アッー!」
「すいまぜんでしたぁぁぁぁ!全部、あ、兄が悪――アッー!」
モッフ君が向かった先に、とんでもない化け物がいるんだと分かった。
好奇心に駆られた私は――村に戻って、弟たちを連れて見に行こう、そう思ったんだ。
一人じゃ危ないし、イノシシ肉を全部回収したいし、森の恵みを放置するのは勿体ないよね。
生肉も美味しいよぉ……。この新鮮な感じがジューシー。
イノシシ肉って本当に美味いよね。
〜〜〜〜〜〜〜
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