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俺の四畳半が最近安らげない件
魔王 〜小さいおじさんシリーズ15
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―――目に青葉 山ほととぎす 初鰹

などと呑気に嘯いていたのは何処の誰だろう。
5月の始めは忙しい。OJTを終えた新入社員達が現場に投入され始め、右も左も分からない社会人一年生の面倒を見つつ、大型連休前の追い込みに奔走しなければならない。しかもこのクソ忙しいのに新人は自分の存在意義がどうだとか自分は社会の歯車になるために会社に入ったんじゃないとか青年の主張を臆面もなくぶつけてくる。でも何とか堪え難きを堪えて育成してきたこいつらのうちの何人かは、大型連休を過ぎた辺りでパタパタ辞めていく。…5月病というやつだ。ほんとやりきれない。連休後の修羅場を思うと、せっかくの休みも心が安まらない。
「――この国の、魚の焼きがイマイチ足りないのだけは閉口だの」
今日も3人の小さいおじさんは、俺の四畳半で初鰹のタタキを蝋燭の火であぶりながら日本酒を呷っている。…焼きが足りないのではなくてそういう刺身なのだが、俺は居ないことになっているので何も云わない。
「他の食い物は大抵旨いのに…確かに不思議だ」
縫い針を串に、賽の目に切った鰹をいくつか刺して火に翳して丁寧に炙るのは、端正か。その横で豪勢が、適当に刺した鰹をボーイスカウトの焼きマシュマロのような感じに炙っている。あ、でもこっちのが旨そう。
「そういう食べ物、なのですよ」
隅の方で、鰹完無視で漬物ばかり食っている白頭巾が、ぼそりと呟いた。
「火を中途半端に通すのがか?」
「藁の香りを付けるためと、食感を良くするために。本来この国の民は皆、しばしば魚を生で食すのです」
「ほう、皆がか…」
端正が顔をしかめた。
「この国の醤はとても質がいいものですが、私はどうにも生魚は…」
弟が生魚にあたりましてね…と、カーテンの隙間に覗く新月を眺める。…その弟は、死んでしまったのだろうか。
「おぅ、とても良い醤だ。余はこの醤ならごくごく呑める!」
呑むな呑むな。
「こうして日がな一日旨いものを喰ってのんびり出来るのも…」
お、いいぞ称えろ親切な家主を。
「―――あの動乱の三国時代を戦い抜いた、ご褒美みたいなものでしょうかね」
……ああ、分かってたよ。分かってたけど報われないな、仕事も私生活も。



「ときに卿ら、妙だとは思わぬか」
他の二人を見回すようにして身を乗り出し、端正が声をひそめた。
「む?」
「このように旨いものが大量にあるというのに、『あの男』が姿を見せぬとは」
豪勢の動きが、ぴたりと止まった。
「……あいつか……」
俺の四畳半を、実に微妙な空気が満たした。なんというか…皆、何か云いたい事があるのに言い出せない雰囲気。
「卿は『こちら』に来てから、彼を見たか」
豪勢は静かに首を振る。…実に微妙な顔をして。
「そうか…現れるとしたら卿の元だと思うのだが」
「現れな
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