魔王 〜小さいおじさんシリーズ15
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いこと自体が考えにくい。という、わけですね」
白頭巾が考え込むように羽扇に鼻を埋めた。…こいつら、一体だれの話をしているのだ?
「食通と名高かったご子息、曹丕殿がねぇ…」
俺にも分かるようにだろうか、白頭巾がようやく名前を出した。
「―――今の今まで敢えて考えないようにしていたというのに、急に何ですか?」
何だよ嫌いなのかよ。よく分からないが親の前だぞ自重しろ。
「戸棚の、菓子がな」
異様な速さで減っているのだよ。と、端正が囁いた。
「それは…これだけ毎日茶を呑んだり酒を呑んだりしていればな、菓子も減ろう」
豪勢が『何だ』と云わんばかりに目を見開いて肩をすくめた。…心なしか、少しほっとしている気さえする。
「そんなレベルではない。この手帳を見るがいい」
端正は、電話の横のメモ帳を半分に切って几帳面に糸で綴った冊子を開いた。そこにはまた几帳面そうな字で菓子の在庫と思しき数字が羅列されている。…なんか端正のこういうところ、何とかならんのだろうか。
「ほほう、流石です。なんと分かりやすい。この書式、私の在庫表でも参考にさせて頂きましょう」
「構わぬ。猫ちぐらに置いておこう」
白頭巾が端正を素直に褒めただと!?そしてお前も何やら在庫取ってんのか!?厭だな何か!!
「…貴様ら、こんなどうでもいいもの在庫管理してたのか?暇かよ?」
「暇だが?」
「暇ですねぇ」
「ぐぬぬ」
……暇だろうなぁ。
「ここ1週間の我々の消費分、及び…アレを除いて」
……アレって俺の食った分か。ひでぇ、アレかよ俺。
「チョコリエールが1袋、フルタのチョコキューブが3個、ミルクキャラメルが2粒、それに」
東ハト オールレーズンが6枚……。
オールレーズンの名前が出て来た辺りで、3人がぐっと息を呑んだ。
「…レーズンて、葡萄か」
「いかにも」
「完全に、居ますね」
え?え?オールレーズンの減りが早いなーとは思ってたけど何、お前らじゃないの!?まだ誰か常連さんがいるの!?
「曹丕殿の葡萄好きは呉にも聞こえる程だったからな…」
周囲に油断なく視線を走らせながら、端正が呟く。
「…居るなら居るで知らせらば良いではないか。何故だ?」
「―――サイコパスの考えることは、分かりかねますな」
「卿!?お、俺が何となくぼかして口にしなかった言葉を易々と!!」
「ぐぬっ……」
父親の目の前で息子を堂々とサイコパスって云い切ったぞこの頭巾野郎!!
いや、分からんでもないけど!!
いつだったか、三国志時代の人肉食が話題に上がった時に豪勢自身が云っていたじゃないか。飢えに負けて人肉を喰った部下を揶揄う為だけに、死者の墓を暴いて頭蓋骨を馬の鞍に括りつける、そんな男だ。サイコパスかどうかは置いといても、倫理的に
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