暁 〜小説投稿サイト〜
提督はBarにいる。
女将vs大将の味比べ
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「あっ、そういえば……」

梅酒ソーダをのグラスを静かに傾けていた鳳翔さん、何かを思い出したかのように両手をぽん、と合わせる。

「今日は早仕舞いだったので、お店のお料理を持ってきたんでした。」

 余り物で申し訳ないのですが、と言いながら傍らに置いてあった風呂敷包みからタッパーを幾つか取り出していく鳳翔さん。なんとも家庭的な光景だが、噂に名高い鳳翔さんの料理を食べる機会がこんな形でやって来るとは思わなかった。

 ウチの鎮守府の食堂は、地元の雇用促進の意味合いもあって現地の方々と間宮、伊良湖が協力して作ってくれている。他の所だと鳳翔さんが作っている所もあるらしいが、ウチの鳳翔さんは専ら艦載機のパイロットの養成、空母の艦娘達の指導教官、艦娘の寮の寮母、更には鎮守府内組織の主計科を取り纏める主計科長を担ってくれている。働き過ぎのような気もするが、一度その事を咎めた際に

『これは私がやりたくてやっているんです、手出しは無用ですっ!』

 と、語気を強めながら怒られてしまった。まぁ、本人が無理していない範囲でやりたい事をやっているというなら止めることはしないが、これに加えて居酒屋の経営しながら酔っ払い共の相手とは。いやはや、我が部下ながら頭が下がるぜ。

「肉じゃがにつくね、ポテトサラダに鰊の昆布巻き……どれも美味そうだな。」

 堪らなくなって肉じゃがを指でつまみ食い。

「あぁ!もう、提督ったらはしたないですよ?」

 むぅ、と頬を膨らませた鳳翔さん、破壊力抜群だ。しかし、そんな表情が目に入らない位にこの肉じゃがは美味い。ジャガイモは表面が程好く熔け出してトロリとしつつ、中はホクホクと芋の良さを感じさせる。玉ねぎは甘く、肉の旨味を引き立てる。この甘辛な味の染みた蒟蒻もいじらしい。それらが主張しすぎず、絶妙なバランスで混じり合ってこの味が出来上がっている。美味いぞコレは、それに何だかホッとする味だ。お袋の味、とでも言えば良いのだろうか懐かしさすら感じる。

「美味いなコレは。俺もこの味は出せんだろうな。」

「あらご謙遜を。提督のお料理は絶品だって、よく聞いてますよ?」

 あの酔っ払い共め、他の飲食の店で他の店の話をするかね普通。

「だから、一度食べてみたかったんですよ?提督のお料理。 」

 さて困った、別に作るのは構わんが、相手はあの鳳翔さん。下手な物を作ってお茶を濁すのもアレだ。しかし、いつものスタンスを崩すのもなぁ。

「何か、食べたい物は有るのか?」

「そうですねぇ……折角ですから果実酒を使ったお料理をお願いできますか?」

 それと、カリン酒をロックでお願いします、とグラスが返ってきた。



 それならば、普段和食が多いであろう鳳翔さんに中華の味をごちそうしよう
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