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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第三十二話 帰投
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支援艦隊との戦いは紀伊たちの圧倒的勝利で終結した。

包囲体制が完了してから、敵の支援艦隊が撃滅するまで、それほど時間を要しなかったし、また損害もほとんどなかった。まさに完全勝利である。
「皆さん、お疲れさまでした!」
紀伊が全艦隊をねぎらった。どの艦娘も砲撃戦等で顔や服が汚れているが、どの顔も生き生きと輝いている。それぞれがそれぞれの役割を全力を挙げて全うし、成果を上げられたのだ。それまで失っていた自信も取り戻した者もいたことだろう。
「いいえ、紀伊さん、あなたの指揮のおかげです。」
赤城が穏やかに微笑みながら言った。
「指揮?まさか、そんな・・・私は何も指示はしていません。各戦隊の皆さんが的確に動いてくださったのだから――。」
「それは結果論です。的確に艦隊を配置したのは紀伊さんですよ。皆を信じて任せてくださったあなたのおかげなのですから。」
霧島も口を添えた。皆も声こそ出さなかったがその通りだという目で紀伊を見ている。紀伊はそれがいたたまれなくなった。胸の奥からくすぐったいような恥ずかしいような様々な気持ちが噴出し始めて、コントロールできなくなりそうだった。これが高揚感というものなのだろうか。
「あ、ありがとうございます・・・・。すぐに帰投しましょう。長居は無用ですよね。あ、ですが・・・・。」
紀伊は首を振ってその高揚感を打ち消そうとした。まだ戦いは終わっていない。ここは敵地なのだ。
「万が一に備え、赤城さん、加賀さん、そして讃岐。索敵機を発艦させましょう。」
「え〜〜〜。帰路なのにですか?」
「帰路だからよ、讃岐。空母として索敵を重視するのは当然の事でしょう?」
「そうです。私などが言えることではないのですが、『慢心、駄目、絶対!』ですよ。」
その言葉に皆が笑った。赤城が前世での後悔を時折こんな言葉で表現することがすっかり知れ渡っているのだ。当人もそういいながら笑っている。それは無論冗談でもなんでもない。索敵が重要だということを赤城ほど身に染みて知っている者はいない。だが、それを一種の気分の和らぎの手段として使ってしまうところに、紀伊は赤城の芯の強さを感じていた。
「はい!」
讃岐はうなずいた。4人はそれぞれの方角に向かい、艦載機を発艦させ、索敵を開始した。

 それが終わると、紀伊を先頭に艦隊は輪形陣形を組みながら20ノット強の快速で戦場を離脱し始めた。
「思ったより敵は脆かったですね。」
霧島が紀伊に話しかけた。
「はい。」
うなずきながら紀伊もそれは感じていた事だった。こちらは完全に先手を取ってしまったといえばそれまでなのかもしれないが、フラッグシップ級も混ざっていたのだ。そう簡単に殲滅できるはずはない。しかも敵の艦隊は横須賀鎮守府を奇襲してきたほどの豪胆さと強力な練度を持っているのだ。支隊とはい
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