第三十二話 帰投
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「い、いいえ、だっ、駄目です!!」
紀伊が喘ぎながら叫んだ。
「それよりも・・・・くっ!!」
腕の痛みに耐えながら紀伊が全艦隊を見まわした。
「全艦隊・・・・戦闘態勢に・・・・・ううっ!・・・移行・・・してっ・・ください!!相手をするべきは敵の水上部隊・・・です。」
「ですが――。」
その時、襲い掛かってきた艦載機隊が次々と突っ込んできた零戦部隊に撃破されて散っていった。
「敵の艦載機隊は私たちが抑えます。」
落ち着いた声がした。皆が振り向くと、赤城、加賀がおびただしい艦載機隊を上空に従えて戻ってくるところだった。
「第一航空戦隊の双璧である私たちが、たかが深海棲艦の艦載機隊に後れを取るはずはないわ。」
加賀が乾いた声で言う。大きくはないその声が盤石の響きをもって各艦娘の耳に届いた。
「任せてください。全艦載機隊をもって、防ぎ留めます。ですが・・・・。」
赤城が口ごもってしまった。それを引き取るように加賀が、
「その代り、水上戦闘には艦載機を少数しか割けない。雷撃、爆撃が各2個小隊程度。理由はわかるでしょう?」
「戦闘で消耗した零戦部隊を絶えず入れ代わり立ち代わり新手と交代しなくてはならないからですし、戦闘指揮に集中しなくてはならないからですよね?」
霧島が問いかける。
「そう。後れを取らないとは言ったけれど、私たちも今回は余裕はあまりないから。」
第一機動部隊の空母は少なくとも6隻であり、その艦載機の大半が攻撃に向かってきたということは、少なくとも100機を超える大編隊が向かってくることになる。
「ごめんなさい。ですが、全力集中しなくてはこの制空戦闘は乗り切れません。紀伊さん、讃岐さんが負傷されているのに・・・・。」
赤城が謝った。
「大丈夫・・です!」
紀伊が応えた。
「水上戦闘は私たちで頑張ります。」
湧き上がってくる鋭い痛みを紀伊は息を吸い込んで鎮めた。
「比叡さん、霧島さん。お願いします。主力戦艦同士の砲撃戦ではお二人の力が不可欠です。力を貸してください。」
今回は戦艦同士の同航戦による殴り合いになるだろう。今までは複合戦闘でけりがつくことが多かったが、今回は違う。こちらの被害も零では済まないだろう。
「もちろん!!任っせといて!!」
比叡が胸を叩く。
「むろんです!!私もやります。それより応急処置を。讃岐さんも・・・・。」
霧島と比叡が手早く二人の傷を包帯で縛ってくれた。多少痛みが和らいだ気がして紀伊は気が楽になった。
「メディカルヒーリングを施した包帯ですから、多少の傷の痛みの緩和にはなります。ですがそれも長くはもちません。」
「ありがとうございます。それで十分です。」
痛みが和らいで、思考ができるようになってきた。負傷しているとはいえ、鎮痛剤があるのはだいぶ違う。紀伊は気持ちを切
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