第三十二話 帰投
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さんらしいです!清霜だって負けません!戦艦に負けない働きをして見せます!」
「私だって!いつでも踊れる準備、できてるよ!」
「舞風らしいわね。でも、私も行けます。」
「私もです!」
「フッ・・・準備は私とて整っている。」
皆が口々に言う。紀伊にはそれがとても頼もしかった。
「赤城さん、加賀さん、艦載機を発艦できますか!?」
紀伊が尋ねた。
「むろんです。直ちに戦闘態勢に移行します。第一戦闘速度に行くわよ、加賀さん。」
「了解。大丈夫、鎧袖一触よ。」
二人はいったん北に転進し、次々と艦載機を放ち始める。むろん紀伊も讃岐も後れを取らない。二人も転進し、一斉に艦載機を放ち始めようとした。その時だ。
「危ないッ!!」
一瞬それが誰に向けられた声なのか紀伊には理解できなかった。
「紀伊さん、後ろッ!!!」
清霜が叫んでいた。振り向いた紀伊、そして讃岐めがけて立て続けに爆弾が投下された。
「きゃあっ!!!」
讃岐が悲鳴を上げて後退する。紀伊も妹を顧みるゆとりはなかった。ものすごい衝撃が右腕を貫き、紀伊は声を上げていた。ぐらつく視界の隅に白い点が走り抜けていく。二人めがけて突っ込んできたのは撃ち倒したはずの敵の艦載機隊だった。
「どういうこと?!」
「まだ、どこかに敵の空母が!?」
艦娘たちがざわつき始める中、紀伊はその正体に思い当たった。同時に霧島が叫んでいた。
「これは・・・違います。敵の艦載機種は新型・・・・!!第一機動艦隊の艦載機隊がアウトレンジから総攻撃を仕掛けてきたんです!!!」
敵は支隊そのものを囮とし、紀伊たちが反転して退却するその時を狙い、総力を挙げてこれを包囲殲滅する作戦に出てきたのだ。
「讃岐、大丈夫?・・・・ぐっ!!」
紀伊は右腕を抑えた。装甲された甲板をなお貫いて敵の爆弾が命中している。これでは艦載機隊を発艦できない。紀伊は負傷した腕の痛みに耐えながら妹を見て、声を失った。
「さ、讃岐!!」
「姉様・・・・私、ドジッちゃいました。」
半ば照れ隠しのように笑いながら言う讃岐は、しかし目に動揺の色を強く浮かべていた。大きな怪我はしていないようだったが、艤装がひどくやられていた。敵艦載機からの攻撃を受けて飛行甲板のみならず、主砲も一部被害を受けていた。
「大丈夫。まだ1基は動かせます。問題ないです。空母としての機能は失っちゃったけれど・・・・・。」
「そんなもの鎮守府に帰ればすぐになおせるわ。讃岐、弱音を吐かないで・・・ッ!!」
紀伊はよろめいた。右腕から全身に物凄い痛みが走り抜けたからだ。
「みんな!!」
矢矧が叫んでいた。
「紀伊さん、讃岐さんを囲んで輪形陣形!!!敵艦載機を一機たりとも二人に向かわせるな!!!」
「応!!!」
各駆逐艦娘や能代たちも叫んでいる。
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