第三十二話 帰投
[2/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
えそれがあっさりと瓦解することは不自然ではないだろうか。それに――。
「あの、比叡さん?」
「ひえっ、なんですか?」
ぼ〜っとしていた比叡は話しかけられて慌てて紀伊を見た。紀伊の傍らで霧島が額に手を当てている。
「比叡姉様、日ごろから注意散漫にならないようにって、あれほど言っていますのに。」
「わ、私、その、あの、ちょっとお腹が空いていて考え事していて・・・・・。ごめんなさい。」
「ああ!!そんな、いいんです!!わ、私こそいきなり話しかけてしまって・・・・。」
とんでもないときに話しかけてしまったと紀伊は顔を赤くしたが、すぐに咳払いして、
「それでですね、お聞きしたかったのは、この前の偵察の事なんです。」
「はい!なんでしょうか?」
「あの時・・・・私たちは敵艦隊はおろか、敵の偵察機にも遭遇しませんでしたよね?」
「はい。まったく出会いませんでした。行きも帰りも。・・・・そう言えば。」
比叡は急にあたりをきょろきょろと眺め始めて、
「そう言えば、ここの海域は私たちが以前に偵察した時に通った海域の近くですね。」
「やはり・・・・。」
紀伊は顎に手を当てて考え込んだ。
「どうかしたの?」
加賀が近寄ってきた。
「敵の索敵網が脆すぎる・・・・そう思いませんか?」
「そう言えばそうね〜。」
愛宕が顎に指を当てながら言った。
「ここまでの道中でも敵の偵察機も偵察艦も見ていないし。どうしてかしら?」
「やはり、まさか――。」
加賀がつぶやいた時だ。
「前方左舷10時の方向に大部隊!!」
讃岐の叫びが全艦隊を貫いた。電流に撃たれたようにどの艦娘も一瞬で表情が引き締まった。
「姉様、索敵機からの報告です。敵は戦艦6隻を中心とした水上部隊!!しかもフラッグシップ級高速艦隊編成です!!20ノットを越える速度、単縦陣形でこっちに向かってきます!!」
「距離は?!」
鋭いまなざしと共に紀伊が妹を振り向く。
「約6万!!西南西に展開!!北東方向に航行中!!突っ込んできます!!!」
「これは・・・。このままでは、敵と並行戦闘になります。しかも敵は私たちの帰路を扼す形で展開していて、これを迂回するのは難しいでしょう。」
霧島が顔を引き締めた。紀伊はすぐに決断した。逃げられないのなら、いち早く戦闘準備を整えるしかない。
「全艦隊戦闘準備!!相手を振り切ることができない以上、交戦するしかありません。連戦ですが・・・・お願いします!!」
「もとよりそのつもりよ。連戦だからと言って後れを取るわけにはいかないわ。」
と、加賀。
「はい。加賀さんと一緒に一航戦の誇り、お見せします!」
「私たちもまだまだ戦えます。ご心配には及びません。」
と、矢矧。
「あらあら〜。みんな元気ね〜。私もよ〜そろ〜!いつでも大丈夫よ!」
「愛宕
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ