■■???編 主人公:???■■
広がる世界◆序章
第六十九話 ここはどこ
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った。シスター・アザリアに頼み込んで、手伝いをする代わりにアリスの授業の様子を観察させてもらったのだ。
その時の彼の驚きは言葉に表せないほどだった。連呼される「システム・コール」。打ち出される炎や氷の矢。カタカナ発音の英語で魔法としか思えない現象が引き起こされているのだ。
『システム』が具体的に何を意味しているのかはよく分からないが、他の言葉の意味は非常に簡単だった。例えば、炎の矢を打ち出す神聖術は「システム・コール。ジェネレート・サーマル・エレメント。フォームエレメント・アローシェイプ。ディスチャージ」である。順番に日本語に訳せば、「システム呼び出し。熱元素生成。元素を矢型に形成。放出」という感じだろうか。アローシェイプをバードシェイプにすれば追尾に優れた羽のある形に形成されるし、サーマルエレメントではなくクライオゼニックエレメントなら氷が打ち出される。ミズキはクライオゼニックという単語を聞いたことがなかったが、きっと冷気とかそういう意味なのだろう。
ともかく、彼は基礎的な神聖術の仕組みを知り、そして確信した。この世界は、間違いなく彼がかつていた世界の人間、それも日本人が設計したものだ。日本語が話され、そして英語で超常現象をあやつる。まるでゲームの世界である。
しかし、やはり分からないことは多い。これだけの広さがあり、物理現象がすべてが通じるわけではなく、超常現象を操れる世界といえばバーチャル・リアリティの世界しかありえないが、これほど精巧な仮想空間など存在しないはずなのだ。
彼が知る最新の仮想空間技術は直接神経結合環境システムNERDLESと呼ばれる、神経細胞に微弱な電磁波を直接与えて五感情報を上書きする技術を用いたもので、その技術を用いた最初の家庭用ゲーム機が近々発売される予定となっていた。しかし、そのNERDLES技術であっても、このような現実世界そっくりの環境を作成できるはずがないのだ。ならば一体、この世界はどういう技術のもとに作られた世界だというのだろうか。
他にもわからないことは多かった。最も分からないのは、この世界で暮らす住民たちはどう考えても生まれてから現在までずっとこの世界で暮らしているようだ、ということだ。また、彼らの話すことが正しければ、この世界は少なくとも200年程度の歴史がある。そんな昔から仮想世界が存在するとしたらまさにオカルトである。神隠しにあった人間は実はこの世界に運ばれていたのだ、とかいうことだろうか。
もはや科学技術ではなくオカルトの方が信じるのがたやすい気がしてきて、ミズキは頭を振った。彼は科学の人である。オカルトは信じない。
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