第二十四話 やつれていく身体その三
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「王位継承権も第一位だ」
「国内の支持も大きいです」
「新教の諸侯、民衆達とです」
「軍は我々が握りましたが」
「宮廷も」
「ですがそのどちらでも」
マリーを慕う者は多いというのだ。
「あの方は慕われています」
「それも深く」
「人を惹きつけるものもお持ちです」
「魅力も備えておられます」
「その魅力も驚異だ」
太子にとってはだ。
「王位を望まないことは何よりだ」
「全くですね」
「聡明であられますし」
「お人柄もよく」
「そのうえ魅力もお持ちですから」
「若し彼女が男なら」
マリーが王子なら、というのだ。
「こんなものではなかった」
「最早王位は」
「最初からあの方のものでしたね」
「それで決まっていましたね」
「我々の動く余地はありませんでしたね」
「どうしようもなかった」
その場合はとだ、太子は言った。
「これから動くこともなかった」
「では」
「これよりですね」
「王位に向かって動きましょう」
「あの方が男であられることを幸いとして」
「そのうえで」
「そうだ、動くとしよう」
是非にと言ってだ、実際にだった。
太子は影からマイラを王位に就けるべく動きだした、王の遺言のことも頭に入れてそのうえでだった。
この動きはマリーも察してだ、側近達に問うた。
「近頃太子が」
「はい、動かれていますね」
「密かにですが」
「マイラ様の御為に」
「あの方を女王にされる為に」
「そうですね、ですが私は」
マリー自身はというと。
「最初からそのつもりはないので」
「だからですね」
「このことにもですね」
「構わない」
「マイラ様を王位に」
「むしろです」
マリーは側近達にこうも言った。
「私から王にです」
「マイラ様を女王に」
「この国の王位継承権第一位に」
「そう言われたいですね」
「ご自身から」
「そうも考えています、姉上ですし」
それにというのだ。
「あの方はよき方です」
「生真面目で不正を許されない」
「潔癖な方ですし」
「識見も備えておられます」
「学問もお好きですし」
「必ずです」
マイラのそうした美点、もっと言えばそればかりを見て話すマリーだった。欠点はあえて見ようとしていなかった。
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