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Three Roses
第二十四話 やつれていく身体その二

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「しかし」
「それでもですね」
「何かを受け継いでいる筈だ」
 病、それもまたというのだ。
「その筈だ、そしてエヴァンズ家は」
「あの病です」
「腫瘍だな」
「それは身体の外に出る場合もありますが」
「中にあれば見えない」
「はい、もっとも外に出ても同じですが」
「死に至る腫瘍だな」
 太子は典医に言った。
「そうだな」
「左様です、王は腫瘍に蝕まれています」 
 その身体をというのだ。
「これまでもそうでしたが」
「今はだな」
「それが表にです」
「出て来ているか」
「ああなられては」 
 病が表に出てしまってはというのだ。
「最早」
「長くはないか」
「間違いありません」
「この国の医学は帝国のもの程進んではいない」
 宮廷のものもだ、何しろ大陸の西方で随一の医学だ。それ故にこの国の医学も凌駕しているのだ。医学だけではないことであるが。
「このことについては」
「まだです」
「知られていないな」
「間違いなく」
「そうだな、では」
「この国の医師の方は誰もです」
「王が助かると思っている」 
 太子はその目を光らせて典医に言った。
「そうだな」
「希望を持っています」
「悲しいことだな、しかしな」
「最早あの方は」
「ではだ」
 王の命が間もなく終わる、それならというのだ。
「我々はだ」
「このことを決まったこととして」
「動こう、妃をだ」
 マイラ、彼女をというのだ。
「この国の主にする為にな」
「では」
「新教の教理と旧教の教理を学び」
「新教の論破の用意をすると共に」
「そしてですね」
「お妃様を」
「その為に本格的に動く」
 今からというのだ。
「王が崩御すればだ」
「即座にですね」
「マイラ様をこの国の女王に」
「そうされますか」
「是非な、だが」
 ここでこうも言った太子だった。
「問題は遺言だ」
「王の」
「それですね」
「若し王がマリー様を次の王と言われれば」
「その時は」
「遺言の力は大きい」 
 王の最後の願い、それは必ずこの上なく強い願いとなるからだ。それが最後に出される言葉即ち考えであるが故に。
「それがあればな」
「非常に、ですね」
「危ういですね」
「マリー様とされれば」
「その場合は」
「ましてや彼女は嫡流だ」
 このことも大きかった。
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