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Three Roses
第二十四話 やつれていく身体その一

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                第二十四話  やつれていく身体
 太子の見ていた通りだった、王は。
 次第に誰が見ても明らかなまでにやつれてきていた、頬はこけ顔色も悪く目の光も弱まってきていた。その王を見てだ。
 太子は彼の側近達に対してだ、冷徹かつ確かな声で言った。
「見ていた通りだ」
「はい、まさに」
「王は」
「病だ」
 明らかにというのだ。
「それも死病だ」
「今は生きておられても」
「やがて、ですね」
「身体が徐々にですね」
「衰えていきますね」
「黒死病や労咳ではないが」
 こうした病ではないことも太子はわかっていた、どちらの特徴も見られないからだ。
「だがな」
「それでもですね」
「あの方は死病に冒されていますね」
「それから逃れることは出来ない」
「最早」
「身体の中から蝕まれている」
 王の病、それはというのだ。
「そうした類だな」
「はい、おそらくは」
 太子の側近の一人である典医が述べた、大陸でも先進である帝国の中でも指折りの名医であり学識はかなりのものだ。
「身体の中に蝕む腫瘍なりが出来ておる」
「中にか」
「はい、そして」
「その腫瘍にだな」
「冒されています」 
 そうなっているというのだ。
「そうした病です」
「やはりそうか」
「はい、あの病は」
「なってしまうとだな」
「助かりません」
 決してという言葉だった。
「最早」
「そうだな、どうもな」
「はい、エヴァンズ家の方ですが」
「代々早世である訳は」
「やはりです」
「その病を代々受け継いでいるか」
「血筋はです」
 まさにそれはというのだ。
「高貴さも受け継がれますが」
「そこに病があればな」
「残念ですがそこも」
「受け継がれる」
「そういうものでもありますので」
「我が家もそうだ」
 ロートリンゲン家もというのだ、太子にとってはまさに絶対のものでありその全てを受け継ぎ背負うことになっている。
「代々だな」
「そうなります」
「この顎は」
 太子は自分のその顎に手をやった、整った顔であるがやや顎が前に出ている、唇は丸く厚い。もっと言うと鷲鼻で面長だ。
「代々のだ」
「ロートリンゲン家の」
「父上も祖父上もそうでありだ」
「太子もですね」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「この顎を受け継いでいる」
「紛れもなく」
「ならば家の血筋に病があれば」
「それもまた」
「受け継いでいる、我が家は幸い多産で長命だが」
 この二つのことは喜ぶべきことだ、だがだった。
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