Side Story
少女怪盗と仮面の神父 36
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クを餌にした真の釣り人は、エルーラン王子だ。
イオーネは罠だと解っていて餌に噛み付き、逆に彼を釣竿ごと混乱の海へ引き摺り落としただけ。
自身の背後に迫る者を知ってたから、必要な材料を一ヶ所に集めた上で賭けを成立させ、王子が言い逃れできない状況を作ったんだ。
「……ゃ」
そう。
爵位継承の承認権を持つ神父、殺さずに拉致した一般民の少女、『地図』で招いた義賊、辺境に現れた王族と百人もの騎士は、あくまでもアルスエルナを貶める為の材料。
イオーネが本当に呼んでいたのは バーデル軍 だ。
「ぃや」
顔の前に持ち上げた両手。暗殺者に断ち切られた鎖が ヂャリ と小さく鳴る。
銀斧の攻撃……あの時はミートリッテがバーデル国内に居たから、死んでも構わなかった。いっそ死んだほうが、イオーネには好都合だった。
継承権の話をバーデルの人間に聴かれて困るなら、眠るミートリッテは何らかの理由を背負う一般民として連れ出された筈(もしかしたら後継者候補とは言ったかも知れないが、有力者が村に危険を残して国外逃亡とか、政治面の弱味を見せるとは思えない)。
それをイオーネ達が殺せば、「アルスエルナの騎士が護り、一度は越境した暗殺者達が追い掛けてまで殺したこの少女は何者だ?」と、バーデル軍に疑問を与えられる。
疑問はやがて真相への道を拓くだろう。
反アルスエルナ派の志気発揚に最低限必要な義賊の情報は、条件が揃えば本人の生死を問わない。
シャムロックは偶々生き残っただけ。
生き残って、敵の口内に自ら飛び込んだだけだ。
そして、餌を求めるバーデル軍は今、アルスエルナ国内で暗殺組織と対峙してる。
アルスエルナを荒らした義賊達と加害者を匿う権力者、義賊の被害者達が勢揃いした、この場所へ誘導されながら……
「ーーーーーーーーーーッ!」
「ミー…… !?」
蹲ったまま無音で絶叫し、髪を掻き毟るミートリッテに、ベルヘンス卿が硬直する。
「まさか、また」
無言の神父に蒼白く変色した顔を向け……
「伯爵!」
一拍置いた後ハウィスへ振り返り、声を荒らげる。
びくりと跳ねた彼女は、不自然に揺れる小さな背中を見つめ……突然、駆け出した。
「駄目! 呼吸をしてミートリッテ!」
ミートリッテの前に膝を突き、濡れた両頬を挟んで持ち上げる。
覗いた白い唇は、はくはくと忙しく開閉するのみ。空気を取り入れていない。
「ミートリッテ!」
(……声が聴こえる。自分の所為で赤く染まった人の声。優しい人達の……悲鳴が聴こえる)
「た て」
此処に来ちゃいけなかった。
指輪は盗むべきじゃなかったんだ。
「たす て」
自分が存在する限り、アルスエルナは攻められる。
騎士共々バーデル軍に
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