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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百十八話 内乱終結後(その2)
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ず賊になった。かなりの装備を持っており油断は出来ない。正規艦隊を動かすのもその所為だ。作戦期間は三ヶ月、またしばらくはメックリンガーとも会えなくなるだろう。
「メックリンガー、司令長官がフロイライン・ミュッケンベルガーと婚約したが結婚は何時になるのかな」
「捕虜交換が終わってからだと聞いたが」
「ふむ、となると半年は先か」
「そうなるな」
ヴァレンシュタイン司令長官がミュッケンベルガー元帥の娘と婚約した。陛下の口添え、まあ命令が有ったそうだが。
「元帥閣下もこれで少しは無理をしなくなるかな」
「そうであって欲しいよ、閣下は余り身体が丈夫ではない」
メックリンガーの言葉に俺は頷いた。ヴァレンシュタイン司令長官は宇宙艦隊の総司令官として我々を指揮統率している。その事に俺は十分に満足している。メックリンガーもそれは同じ思いだろう。だが完璧な人間など居ない……。
司令長官の欠点は二つ有ると俺は思っている。一つは健康面で不安が有る事だ、そしてもう一つは自分が帝国屈指の重要人物だという意識が希薄な事。内乱鎮圧においても自分を囮にするなど無茶な行為が多かった。無謀なのではない、何と言うか自分の命に関して執着が薄いように思えるのだ。
「貴族と平民の結婚か、これから増えるのかな」
俺の問いにメックリンガーは頷いた。
「増えるだろう、門閥貴族の多くが居なくなったのだ。結婚相手を選ぶ余裕は無くなったはずだ」
「なるほど」
「フロイライン・マリーンドルフがルッツ提督と親しくしているらしい」
メックリンガーの言葉に思わず口笛を吹いた。周囲から視線が集まるのが分かった。メックリンガーを見て片眼をつぶる。彼が俺を見て静かに笑った。
「聞いているか、クレメンツ? 劣悪遺伝子排除法が廃法になるそうだ」
「なるほど、世の中は変わるか」
「変わる、良い方向にな」
“誰もが安心して暮らせる国家”、“新しい時代を我等の手で切り開く”、第五十七会議室で司令長官が言った言葉だ。その言葉が実感できた時、無性に乾杯したくなった。出撃は一週間後だ、出撃すればまた当分は会えなくなる。
「メックリンガー、乾杯しよう」
「構わんが何に対して乾杯する?」
「そうだな、新しい帝国に、と言うのはどうだ」
俺の言葉にメックリンガーが嬉しそうな表情をした。
メックリンガーがグラスを掲げた。俺もグラスを掲げる。
「新しい帝国に!」
俺の言葉にメックリンガーが続いた。
「新しい帝国に!」
一瞬顔を見合わせるとグラスのワインを一息に飲み干した。
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