60.第十地獄・灰燼帰界 前編
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ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッ!!!
『ギュオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!?!?』
黒竜の背中、翼の付け根部分に夥しい量の弾丸が降り注ぎ、堅牢を誇る黒鱗が凄まじい速度で弾け飛んでいゆく。冗談のようにあっさりと、再生する速度を容易に上回り、まるで氷に熱湯をぶちまけるように、無慈悲に。
撃てば撃つほどに俺の心だけが肉体を離れ、どこかに消えていきそうになる反動を歯ぎしりして堪え、俺は死力を振り絞って撃ちまくった。あと数秒も続ければ俺と言う存在が何を考えていたのかを完全に忘却する領域に達しそうなほどに、それは極限の一斉掃射だった。
『徹魂弾』は命中した物体、エネルギー、運動を弾丸に込められた力の分だけ削る。たとえそれが不壊属性だったとしても、そのような性質ごと殺す、反物質によるエネルギーの発生を伴わない対消滅に近い現象を引き起こす。
最初の一撃を浴びたその瞬間には既に手遅れ。
背中の肉を抉られ、翼の付け根を殺され、翼による移動回避も叶わぬまま一方的にいたぶられ続ける。この一瞬――二重の重圧によって動きが鈍った瞬間に俺の持てる最大火力を叩き込む。『断罪之鎌』では振るモーションを見てから回避されるため、完全に弾道予測が出来ない照準の仕方をする『徹魂弾』だけで実行が可能だった攻撃。
そして、黒竜は他の誰よりもそれをはっきりと理解していた。
「……ッ、こいつ、どれだけ……ッ!!」
弾丸を発射するたびに脳の回路が焼ききれそうな程に激しくなる『死』を堪える俺の眼に、絶望的な光景が映った。
黒竜が翼を上部に展開して、『徹魂弾』の掃射を防ぐ盾にしている。弾丸は確実に翼を削って機動力を封じているが、これでは魔石どころか背中の黒鱗まで弾丸が到達しない。時間をかければ出来るだろうが、時間をかけられるほど俺の弾丸は長く保たない。
しかも第二形態で見せた灼熱の炎を翼に纏わせ、『徹魂弾』の破壊を軽減するバリアのように使っていた。恐らくそれもまた黒竜が、本来は攻撃の為に取っておいた切り札の一枚。この状況に至ってもまだ黒竜は、こちらの思惑に欠片も乗ってはくれない。
翼を犠牲にすることで時間を稼ぎ、魔石の損耗を控え、そして本当の切り札を切るまでの時間稼ぎを画策している。おそらく、アズが想定する攻撃時間限界以上の時間を見積もったうえで、だ。
待つのは、死。
もうこの攻撃を中断しようともしまいとも、黒竜の切り札に対抗する力は俺には残されていない。この魂の連撃が途絶えたときは、俺が力尽きて指先一つ動かせなくなり、疲労と無の境目が曖昧になる瞬間だけだろう。
だから――次だ。
「背負え、オーネストォォォォォーーーーー
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