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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
60.第十地獄・灰燼帰界 前編
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)ぃをー……いま、いま、堕とすッ!!」

 腹の底に力を籠め、俺は両腕に抱えた『徹魂弾』を――『出鱈目な照準でぶっ放した』。

 まるで若者が音楽に合わせて出鱈目なステップを踏むように、派手なだけの破裂音を撒き散らすように、体を回転させながら撃つ、撃つ、撃つ。残魂(のこり)も疲労も忘れ、嘗てより連射性能の増したアサルトライフルで俺は銃の舞を踊った。

 弾丸は下へ、上へ、銃の反動(リコイル)に振り回されるようにまるで照準を定めないままに嵐のように周囲にばら撒かれる。その一発さえも、黒竜には向かずにただ無為に弾丸を連射し続けた。マズルフラッシュが空しく空間を照らし、魂はただただ散逸し続ける。

 だって、『照準を合わせる役目は俺にはない』のだから。

 黒竜、お前は一つ見落としをしているのかもしれない。
 俺が目覚めると同時に八方に放ち、壁や天井に突き刺さった巨大な鎖たちを、お前は徹底的に破壊しなかった。
 俺が設置した鎖を張り直さず移動だけに使っていたから、元々大した役割はないものと考えたのか。
 それとも現在の黒竜の能力ならば鎖が飛来しても苦も無く破壊出来るからか。
 或いは、破壊に費やす時間と隙を鑑みて、あえて放置せざるを得なかったのか。

 いずれにせよ、その判断は残念なことに致命的な失態と言わざるを得ない。

「さあ、出番が来たぜ!踊り狂って捻じ曲がれよ『選定之鎖(ベヒガーレトゥカー)』ッ!」

 この鎖は俺の魂であるが故、どんな形状でどこにあろうが俺の意のままに動く。
 俺の為だけの黒子であり、バックダンサーであり、(しもべ)であり、俺自身。
 そして――鎖も弾丸も俺の魂を源泉とするモノである以上、『こういうこともできる』。

 壁や天井に突き刺さったアズの鎖たちが指揮棒に振り回されるように一斉に蠢き、我先にと空間を塗り潰すように空間を駆け巡る。その鎖の端に、或いはリングに、俺の放った『徹魂弾』が命中した。
 ギキィンッ!!と甲高い金属音を立て、弾丸の弾道が変化する。さらに同じ鎖に出鱈目に放った弾丸が何発も命中し、弾き、弾道を変化させ、跳弾の嵐が発生した。その全てが出鱈目なようで――鎖の結界の中から漏れて壁や床に命中するような無駄弾はただの一発もなし。

 黒竜との惨殺空間に発生したのは、魂魄をも穿つ消滅の棺だった。

「運べ、囲え、弾け、穿てッ!!廻転する『死』の跳弾する先に、不可避の尽滅よあれかしッ!!」

 跳弾というのは漫画のように意図してコントロールすることは不可能に近い。だが、俺の鎖と俺の弾丸は生憎とまっとうな物理法則の元に動いてはいない。俺が今現在放つことの出来る最悪の技術によって出鱈目に散逸した筈の破滅が次第に収束し――黒竜の鈍った背中に流星のように降り注いだ。


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