60.第十地獄・灰燼帰界 前編
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た』。
「そしてもう一つお前さんに伝えておく……罪からは逃げられない。お前が生きている限り、それはどこまでもお前さんを追い、そして負う」
黒竜がそれ――あの十字架がアズの目の前に存在しない事を認識した瞬間、黒竜の前上から異音がした。
ギギキキキキキキキキキキキキキキッ!!!
そこにあったのは、黒く、どこまでもドス黒く染まった漆黒の鎖が周囲に巻き付いた十字架。
具現化せざる罪を総て吸い込んだように重く、深く、決して潰える事はなく。
「背負えや、そいつがお前さんの『罪』の重みだ」
その重圧だけが、黒竜の全身に雪崩れかかった。
ずぐん、と、黒竜の翼に果てしない重量が伸し掛かる。
これまで世界に誕生してから今に至るまでに虐げられてきたあらゆる者達の血涙と怨嗟が蘇るように、その骸の重量が降り注いだように、余すことなく十字架によって存在を認められた罪科たちは止め処なく黒竜を地に堕とさんと引き摺る。
ただし。
『グゥゥゥウオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!』
背負った罪の重みに耐えられる者にその効果は鈍く、そして罪という意識を超克した化け物の躯体を留めるには余りに足りなすぎる。人間なら頭蓋ごと砕けて潰れる死の重圧も、黒竜の機動力を完全に奪うには至らない。
まだ動ける――ただし、万全からはかけ離れる。
それで黒竜が弱くなる訳ではないが、ことオーネストにとってその僅かな隙は致命的と言う他ない。
「まぁ、そうがなるな」
間髪入れず――オーネストの両腕に発生していた『真空の爆弾』が明確な指向性を持って黒竜の四枚の翼に叩き込まれた。
黒竜がオーネストの突進を真似たのと同じように、オーネストも黒竜が散々放ってきた『真空の爆弾』を模倣し、再現し、更に指向性を持たせることで更に強い衝撃を発生させて黒竜に叩きつけられる。
通常ならば黒竜にその程度の風など傷を負うほどの攻撃たりえない。だが、『贖罪十字』の罪と星の重力と、更には黒竜の翼が上方から攻撃を受けたときに最も風を浴びる面積が広くなる瞬間を狙い打たれたことにより、黒竜の動きが『鈍った』。
これだけの攻撃を叩き込まれて、それでも黒竜の動きは『鈍った』だけ。
少し鈍り、その一瞬から更に少しだけ鈍り、それでも決定的な隙とは言えない。
依然としてこの蒼穹を朱に染める覇王の速度は、オラリオ最上位冒険者を越える駿足でちっぽけな人間種を圧倒せしめる。
故に――その僅かな隙をこじ開ける為の一手を『切り札』と呼ぶ。
俺は、オーネストが黒竜に仕掛けるより僅かに早く、十字架を手放すと同時に事を起こしていた。
「かーごめかごめ……籠のなかの黒竜(とり
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