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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
60.第十地獄・灰燼帰界 前編
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いリヴァイアサンは、こちらでの『三大怪物』たる海の覇王リヴァイアサンより多くの人間を殺しているかもしれない。ファンタジーが胡乱げな目で見られていたあちら側にも、確かに形を変えて怪物はいたのだ。

 長期に渡って自然発生し、拡散し、求められ続ける実体を伴わない怪物。
 長い歴史のほんの一部の年月だけ、人間に不可避の猛威を振るった怪物。
 あちらとこちらでは、すべてが対照的だ。

 向こうでは聞き上手で主張の少ない凡夫だった俺も、こちらでは化け物呼ばわりされる狂人扱い。それを気にしていた嘗ての俺は、まるで気にしない今の俺に取って代わった。しかし今だけ、俺は俺自身を化け物であれと望んでいる。

「じゃ、そろそろ黒竜に人間ってヤツを堪能してもらうかね」
「既に授業料は眼球で払ってるが、もう一杯喰らうのも乙なものだろう」

 神でも悪魔でもない俺自身に祈る。
 堕ちて尚堕ちよ。沈んで尚沈め。
 俺よ、目の前に君臨する怪物を上回る怪物であれ。

「カウント、3……」

 両手にカラシニコフに酷似した銃が握りしめられる。グリップから伝わる硬く冷たい感触と、心臓から伸びる『徹魂弾(アーカードゥーシャ)』の鈍い光がやけに鮮明に感じられた。これ以上なく弾の威力は高まっているが、これ以上なく魂の限界を感じさせた。

「2……」

 目線を合わせないまま、オーネストの周囲に風が集まっていく。神秘的なエネルギーを内包した濃密なまでの空気の流れが、目には見えない『何か』を形成してゆく。これまでのオーネストが纏っていたそれと桁が違うように感じるのは、初めて扱う魔法の風の具合を掴んできたのだろう。

「1……」

 オーネストの体が風の塊を抱え、爆ぜるように加速する。
 俺の背中に輝く銀色の十字架が現れ、キキキキキキ、と歯車が回転するような異音を立てる。

「ゼロ」


 轟ッ!!!――と。


『グゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!』
「――ッ!?」


 筆で書き殴った墨のような漆黒が、空間を貫いてオーネストを追い抜く。
 それは本当に、何の前触れもないノーモーションからの、究極の奇襲だった。

 爆音を置き去りにする、音速を超えた突進。オーネストが散々使ったそれを模倣するような破壊と粉砕に特化した砕滅の集約点となって加速する。
 どのような原理でそれを成したのかなど分かりもしないが、一つだけ確かなことがある。黒竜は後出しジャンケンなど狙っていなかった。黒竜が考えていたのは――。

 ――『俺達が何かする前に鏖殺する』ことだったのだ。

「………マジか」

 次の瞬間、黒竜の顔面は今まさに黒竜を攻撃しようとするアズの目の前にあった。
 その口からは溢
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