60.第十地獄・灰燼帰界 前編
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序の為に』
やがて結論が出たというように、すべての人間が笑顔でユグーに手を差し伸べる。
100にも届こうかという笑顔、手のひら、意識、それに呼応したかのようにユグーの体の黒い大蛇の躰が妖しく輝き、その場の全ての意志を喰らうように蛇咬がバグン、と閉じた。人間たちは一人もいなくなり、そしてユグーの頭の中に『総論』とやらが滝のように雪崩れ込む。
ユグー・ルゥナという意識が膨大な流れの内に流されそうになり、意識が遠のく。
その狭間で、問う。
(お前らは、誰だ。お前らを見る俺は――誰だ?)
ただその疑問だけが、只管に掠れ行く意識のなかで存在し続けた。
= =
やればできるなんて無責任なことを言われれば反論の2,3はしたくなるが、やらねば死ぬと言われれば人間に残された道は実行と逃避の二者択一。なれば選択肢の肢とは事実上一つのようなものであり、俺にそれを選ぶ事への躊躇いは存在しなかった。
「最大火力による徹底的な殲滅ねぇ。単純な話だけど、確実に叩き込んで命中させられる保証が欲しいな」
「俺が作ってやろう。満足か?」
「満足でなくともやれってんだろ?どうせ他に代案もないし、やろやろ」
「ただ――こいつは後出しジャンケンかもしれん」
オーネストの眼光が、一瞬だけ今ではない遠くを見据える。
「こちらも札を切るが、向こうも札を二枚以上伏せているかもしれん。相手が先に焦れて動いた場合に出鼻を挫く捨て札は、俺なら用意するからな。後出しされた場合の勝率は五分を切るのを肝に銘じておけ」
「と、いうことは確実に切ってくると踏んでる訳ね」
少年漫画とかならこちらの攻撃と同時に向こうが動いたら「何だと!?」と驚愕するのだろうが、この可愛げの「か」の字もない無頼漢にかかれば予測可能な未来として予め言葉に出てしまうらしい。
「黒竜の頭脳も怖いが、お前の灰色の脳細胞も怖いよ」
「人間ってのはそういうもんだろう。『悪魔の狡知』なんて言葉があるが、実際にそいつをひねり出してきたのは神でも悪魔でもなく、人間だ」
悪魔に一番近い生物は人間、などという名言がある。間違ってはいない。少なくとも、ちょっくら国を滅ぼすために核ミサイルのスイッチを押せる程の権力を握った者が複数存在していた俺たちの世界では、そいつは至極まっとうな考え方だ。
それに、たとえ悪意でなくとも一つの名の元に統制された集団というのはどれも形のない化け物になりうる。俺たちの世界では国家とは怪物だ。ホッブズとかいう哲学者曰く、恐れ多きその名は「リヴァイアサン」。膨大な人間の意識を飲み込んで善と秩序の力を振るうその化け物は、時に戦争と言う名の虐殺を大衆の意として振るうことができる。
皮肉な話だが、もしかしたらこの形のな
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