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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
60.第十地獄・灰燼帰界 前編
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を叫び続けるのです。人の可能性は無限。たとえ何十年の月日がかかろうとも、彼らはきっと秩序を知り、平和的に生きてくれることでしょう。それが平和な千年王国の始まり。無意味な闘争の潰えた人類が新たなステージへ進む階なのです』
『生きることを諦めるのはイヤ!でも他人が生きられることを選べないのはもっとイヤ!!だからアタシはアイツラが戦うんなら何度でも立ちはだかる、何度でも止める!何度繰り返してもいいよ、アタシの自己満足だから!!』
『邪悪滅するべし!!人を持て遊ぶ神の先兵も、人類に災厄を振りまく魔の狩人も等しく地上から滅するべし!!人の道は人が決める!!』
『神様はやさしいんだよ。やさしくない神様もいるけど、やさしい神様もいるんだ。神様はとっても聡明で、何でも知ってて、いつも人間にやさしい。そんな神様のいうことを聞いて生きていれば、ぼくは天国に行けるんだ』
『愛が足りない!!この世の全ては愛を育む愛の庭!!愛こそ人類最強にして無尽の感情!!世界よ、愛を知り、愛に包まれよ!!闘いなんて馬鹿馬鹿しいぞォ!!』
『殺すと決めたら殺しなさい!恋人も家族もガキも老人も殺しなさい!!殺して憎むのよ!世界を憎み抜くの!!ここは常世の地獄、救いなぞ幻想!!憎め憎め憎め憎め憎め憎め憎め!!憎しみこそ生きる原動力になる!!生きて殺して俺以外全員いなくなってしまえば………雑音を聞かずに済むのだから』

 それは無責任な、どこまでも無責任な数多の声。
 目の前の闘いの結末を、滅茶苦茶に語るだけの声。
 無意識的で、集合的で、この世の全ての色をごちゃごちゃと混ぜ繰り回し、その全ての色が混ざらないまま歪なマーブル模様を描いているような、異常で異質なそれを絵具に人間の型に色を塗り込んでいるような、混沌。

『滅べ!!』
『生かせ!!』
『赦せ!!』
『怒れ!!』
『止めよ!!』
『させよ!!』
『愛せ!!』
『憎め!!』

 荒れ狂う感情の奔流に耳を苛まれつつ、ユグーは自問する。
 それはこの声の正体でもなく、自分が何をすべきかでもなく、純粋な疑問。

(何故そこに、俺ノ意見が。俺ノ声が存在シナイのだろう)

 手のひらの黒い筋が蠢き、見えていなかった手の甲にてばくりと口を開く。
 ユグーの手の甲に現れたのは、すべてを飲み干す巨大な蛇咬だった。

『総論』
『滅せし確率低し。説得の可能性難し』
『両者を滅する可能性が生まれるまで相互に生かし、現状維持』
『されど連中は人間の世界を崩壊させる破滅の因子』
『見極める必要がある。いつ、どうするのか』
『取り除かなくちゃ』
『毒を制する毒になるかもしれない』
『人間の為に』
『人間が想う人間の為に』
『人間が人間としてある為に』
『神が滅んでも人が生きていける、人間の為だけの秩
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