暁 〜小説投稿サイト〜
提督はBarにいる。
夏じゃないよ、秋なのよ
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「大丈夫かぁ?ホントに。」

 息も絶え絶えの夕立に水を出してやる。風呂上がりだというのに浴衣は気崩れているし汗だくだ。普通に見えちゃいけない所まで見えているが、本人にはそんな余裕は無いらしい。

「お風呂上がりで……ダッシュは…ヤバい…っぽひぃ〜……。」

 舌を出してハッハッと息を短く吐く夕立。やっぱり犬っぽい。俺は苦笑いしながらも何を作るか思案を始めた。さて何を作ろうか。……あ、そう言えば泥抜きが終わった『アレ』があったな、ホントは俺一人で味わおうかとも思ったが、捌いて出してやるか。

「こないだ本土の知り合いから中々珍しい物が送られてきてな。食べるか?」

 俺はそう言いながら木桶を二人の前に差し出した。中に入っていたのは……

「鰻……ですか?」

「あぁ、それも天然物だ。貴重品だぞ〜?」

「え〜、鰻はもう旬じゃないでしょ〜?」

 そう言ってブーブー文句を言ってきたのは夕立だった。



「だって、『土用の丑の日鰻の日』って言うでしょ?だから鰻の旬は夏っぽい。」

 意外だなぁ、夕立がそんな言葉を知ってるなんて。でも、浅はかだな。

「残念、それは江戸時代の発明家・平賀源内が考えたとされているキャッチコピーなんだ。」

 本来、鰻の旬は晩秋から初冬の寒い時期だ。鰻は冬眠する為に秋頃から食欲を増し、肉厚で脂の乗った身になる。逆に夏場は活発に動き回るから脂は少なく、身も薄味になりやすい。だから、江戸時代の鰻屋は夏場の売り上げに四苦八苦していた。そこで考え出されたのが『土用の丑の日鰻の日』だ。

 元々、土用の丑の日には頭にうの付く食べ物を食べると夏バテせずに夏を乗り切れるといわれていた。瓜(うり)とか梅干しなんかは、その代表格だな。だから、平賀源内という人が売り上げの減少に苦しむ鰻屋を憂いて、さっきの言葉を考えた、と言われている。まぁ、現代は養殖鰻が一般的だから、夏に合わせて肥え太らせるんだけどな、無理に。

「へ〜、じゃあ本当は今くらいの方が美味しいっぽい?」

「ん?まぁ、そうなるな。」

「じゃあ、それでお願いしまーすっ!」

「では、私も。」

 へいへい、解りましたよ〜っと。けど、今から捌いて焼くから時間がかかる。その間に一品二品、摘まんでいて貰おうか。ま、お通しだな要するに。

まずは豆腐でチャチャっと一品。使うのは木綿豆腐。キッチンペーパーで包んでザルに乗せ、上に皿を乗せて水切り。その間に準備するのは大葉……青じそだ。分量としては木綿豆腐1/2 丁に対して大葉10枚位かな。大葉を縦に半分にして、細千切りにする。豆腐の水切りには15分位かかるから、その間に大根の一風変わった浅漬けも作ろうかな。

 大根は10cm位の長さの分量を皮付きのままで1cm幅
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