暁 〜小説投稿サイト〜
提督はBarにいる。
華は強く、美しく
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の日は早くに入浴を済ませ、夕食を食べるか晩酌をしにウチか鳳翔さんの店にやってくるのだが。

「今日は久々に自分の為に鍛練してたんです。それに熱が入り過ぎてしまって……。」

 神通は恥ずかしそうに俯いた。神通は我が鎮守府の中では最高錬度の軽巡だ。その面倒見の良さも相俟ってか、よく駆逐艦娘達の訓練の教官を務めてくれている。しかも昔取った杵柄という奴か、かなりのスパルタらしい。まぁ、『華の二水戦』旗艦を勤めた事もある艦の生まれ変わりだ。全く違和感は無い。

 『華の二水戦』とは、旧大日本帝国海軍の誇る「第二水雷戦隊」の事で、ヤクザ映画に例えると、戦艦や重巡がいる「第一戦隊」を親分衆とすればその周りを固めるボディーガード的な役割を果たすのが「一水戦」……第一水雷戦隊であり、二水戦はその花道の障害物(ゴミ)を掃除する謂わば斬り込み役、悪く言えば鉄砲玉だ。
 そんな部隊の性質上、超武闘派揃いである二水戦の旗艦の中でも特に有名なのが、この神通なのだ。そんな艦の生まれ変わりのせいかとても戦闘にストイックで、他者に厳しく、自分にもっと厳しい。だが、そのストイックな姿勢が駆逐艦や戦艦達からも信頼を得ている彼女の良いところだ。



「……で、何か摘まむかい?」

「そうですねぇ…では、日本酒のオススメを冷やで。後は、何か簡単に摘まめる物を。」

 ふむ。冷やで美味い酒か。

「辛口と甘口、どっちがいい?」

「実は、ある娘と待ち合わせしてるんです。その娘はあまり日本酒は飲んだ事が無いので、スッキリと飲みやすい、甘口をお願いします。」

 日本酒をあまり飲んだ事が無いのか。……駆逐艦か?となると、あまり切れの良すぎる甘口ではキツいか。何かあったかな……。あ、そう言えばと俺はハッと思い出し、酒棚の奥の方から純白の箱を取り出した。

「提督、それは?」

「同期の奴からの貰い物だったんだがな。あまりに口当たりが軽すぎるんで、ちと俺の口には合わなくてな。」

 そう言って取り出した一升瓶の中身は驚くほどに透明で、まるでミネラルウォーターのような見た目。

「上善水如(じょうぜんみずのごとし)。名前の通り、限り無く水に近いような、雪融け水のような軽い口当たりの純米吟醸だ。」

 まずは味見してみろ、とガラス製の小さなグラスに注ぐ。俺も久々に飲むからな、味を思い出す為にも飲むか。神通も始めて飲むからか、恐る恐る口を付け、チビリと口に流し込んだ。すると、神通の目が大きく丸く開かれる。

「美味しい……?本当に水を飲んでるみたいです…。」

 うむ、確かに名前に偽り無し、って感じの味だよな。どこまでも透き通った味で日本酒独特のツンとした香りや、日本酒嫌いの人が言う苦味は全く感じない。寧ろ、甘酒以上の強い甘味と仄かな米の香り
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